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阪神タイガースバトルロワイアル第4章

1 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:33:58 ID:MKhzBAxK0
前スレ  http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1102341356/

第一章http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1094306095/
第二章http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1099708704/



2 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:34:55 ID:MKhzBAxK0
保管庫  ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/

若虎BR紅白戦
ttp://homepage2.nifty.com/sorasouyo/wakatora.htm



他球団現行スレ

中日ドラゴンズバトルロワイアル第十章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1106125029/l50
千葉マリーンズ・バトルロワイアル第4章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1105085112/l50
アテネ五輪日本代表バトルロワイアル
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1106146546/l50




3 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:35:49 ID:MKhzBAxK0
他球団バトルロワイアル保管庫

読売巨人軍バトルロワイヤル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://cdbr2004.hp.infoseek.co.jp/ (2004年版)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://www3.to/fdh-br/
千葉マリーンズバトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/ 
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/



4 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:35:53 ID:S6X2PdxG0
三 瓶 で す

5 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:45:30 ID:ZZwlG4890
リレー

前々スレ939氏による選手一覧・時間表
http://www.geocities.jp/htbr_2004/list.html
http://www.geocities.jp/htbr_2004/time.html

6 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:45:56 ID:TJqh4/7U0
>>1
乙です!!

よかった〜やっと立ったよ・・

7 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:46:03 ID:ZZwlG4890
関連スレ

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ3
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1105704084/l50

8 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:46:45 ID:ZZwlG4890
>1乙。妙な補足になってしまって正直スマンかった。

9 :1:05/02/20 21:48:03 ID:MKhzBAxK0
やっと立てられた・・・
つか、立てられると思わなかったから
自分でもちょっとびっくり。

10 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:49:40 ID:ZZwlG4890
ああ、>5でURLの頭を抜き忘れたよ…マズイ ort
即死が恐ろしいんですが、職人さんがたも直ぐには気付かない&投稿できないかもしれないんで、
なんとか間埋めのレスで凌がねば。

11 :1:05/02/20 21:54:27 ID:MKhzBAxK0
>>8
いえいえ、助かります。

12 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:55:50 ID:TJqh4/7U0
ほしゅ。

13 :作品ガイド 1/6:05/02/20 21:56:57 ID:ZZwlG4890
『13◆2qL78YV/jc氏版』
タイガースバトロワの最初の職人である13氏による作品。
時期は2004年11月。舞台は人工島。
甲子園と人工島は地下通路で連絡している。

運営委員会からの『指令』というものがあり、これに沿わないと爆死するなど、
独自のシステムが特徴。

13氏が体調を崩しているため、しばらく休止の状態。

14 :作品ガイド 2/6:05/02/20 22:00:57 ID:ZZwlG4890
 
『火粒◆0Afu/D6AhM氏版』

二番目の職人?である火種氏の作品。
時期は日本シリーズが行われる頃。
舞台はいずこかの遊園地。ロッカールームから出発。
どことなく詩的な文章が特徴。

短期間の投下ののち、動きが止まってしまっている。再開が待たれる。

15 :作品ガイド 3/6:05/02/20 22:07:39 ID:ZZwlG4890
 
『328◆U/eDuwct8o氏版』

328氏による作品。現在、単独職人遂行型では最大の話数を誇る。
時期は2004年のいつか。オフシーズンであることがうかがえる。
舞台は阪神壬午園(じんごえん)球場。甲子園に酷似し、規模はその何倍もある球場。
武器はバットとボール、それにグラブが渡されるという異形のバトロワ。
少年漫画の如きアツい展開が特徴。

投下も頻繁にされており、人気を集めている。

16 :作品ガイド 4/6:05/02/20 22:14:03 ID:ZZwlG4890
 
『781◆2Ud8ySLCX氏版』

781氏による作品。話数はまだ少ないが、強烈なインパクトを残す。
時期は2005年冬。選手らはキャンプ先のオーストラリアへ向かっているが、
搭乗機が攻撃を受け、不時着したマリアナ諸島のいずこかの無人島が舞台。
異形、といえばこれ以上異形のものはないであろう、
B級アクションのような独特の展開と文章が特徴。

しばらく前にも投下があり、マイペースながらも進行はしている様子である。

17 :作品ガイド 5/6:05/02/20 22:21:10 ID:ZZwlG4890
 
『リレー版』

プロ野球板におけるバトロワの基準方式であるリレーによる作品。
515氏、514氏、615氏、542氏、924氏の参加が確認されている。
時期は不明ながら、2004年オフシーズンと推測する。
舞台も不明ではあるが、元祖バトロワに近い感じの島のようだ。

神職人ぞろいだと個人的には思っている。泣かせの名文が多く含まれる。
読者による地図や参加者&武器の一覧などもあり、タイガースバトロワの看板的存在。

職人さんが複数いるせいか、投下頻度も高い。

18 :作品ガイド 6/6:05/02/20 22:26:12 ID:ZZwlG4890
 
『49◆NRuBx8130A氏版』

最も新参の職人、49氏による作品。
各バトロワの投下が滞っていた時期に開始された新しいバトロワ。
時期は日本シリーズ終了直後。
舞台は何十年も前に廃坑になった鉱山の島。49氏自身から地図が提供されている。
長崎県端島、別名軍艦島と呼ばれる実在の島がモデルになっているのが特徴。

開始時期は遅いが、投下が頻繁であったため話数は進んでいる。

19 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 22:26:55 ID:ZZwlG4890
お目汚し失礼。
独断と偏見による作品ガイドでした。

20 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 22:37:39 ID:RdDLlWY60
13-18
乙です!

21 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 23:00:44 ID:cyRaAX2f0
おつ!

22 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 23:03:30 ID:S0TlNtp60
新スレ乙です!保守

23 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 23:28:13 ID:hQSxidgS0
保守!!

24 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 23:54:07 ID:Xl1pk3HE0
新スレ乙です!


25 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 00:14:59 ID:cBwoCKa30
とりあえず捕手

26 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 00:21:39 ID:c7v/Kdt90
保守

27 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 00:25:55 ID:e7m3IagK0
保守

28 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 00:55:38 ID:GxHoDmnH0
>>1
ソフロワ新スレ立ってました。

ソフトバンクホークスバトルロワイアル第二章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1108894499/


29 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:04:56 ID:KWHZbjb/0
ほっしゅ

30 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:07:31 ID:e7m3IagK0
保守

31 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:08:01 ID:e7m3IagK0
保守

32 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:09:01 ID:QtZGJQJS0
保管庫にリレー版37章がないようだけど
再貼付けしておいたほうがいいのかな?
自分514さんじゃないんだが・・・

33 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:09:01 ID:e7m3IagK0
さらに保守

34 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:16:57 ID:e7m3IagK0
もいっちょ保守

35 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:23:21 ID:g0lfZxLX0
即死回避っ

36 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:26:38 ID:c7v/Kdt90
即死回避って40とも60とも言われてんだよな?

37 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:33:26 ID:g0lfZxLX0
どちらかわからないけど、まぁとりあえず保守。

38 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:44:31 ID:gE+KNU6E0
保守

39 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:45:32 ID:gE+KNU6E0
捕手

40 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:48:08 ID:gE+KNU6E0
ほしゅ

41 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 01:48:23 ID:JF/BYvld0
即死回避ほっしゅ

42 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:00:40 ID:c7v/Kdt90
保守

43 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:15:26 ID:S6bgFudc0
捕手

44 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:37:19 ID:fcl5Ffxa0
即死回避保守!


45 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:43:56 ID:fcl5Ffxa0
ほしゅ


46 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:45:11 ID:zL8v0drR0
保守

(丶`_ゝ´)ノ [ 急募!ゴレンジャー隊員 ] 委細面談


47 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:48:21 ID:zL8v0drR0
保 ( ゚∋゚)人(・`_´・)守

48 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:52:05 ID:zL8v0drR0
捕手 (つx・。) 

49 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:54:17 ID:zL8v0drR0
iミ! ゚ -゚/.! hosyu...

50 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 02:56:51 ID:zL8v0drR0
(‘ ε ’) …

51 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 03:05:18 ID:JoSfCjIP0
よかったやっと立ったか!
[`ー」ー]捕手

52 :514:05/02/21 03:47:59 ID:mr4IsjSqO
>>1
遅ればせながら、乙です。
>>32
申し訳ありません、再貼付けをお願いできますでしょうか。
本来なら自分がやるべきなのですが、情けない話ですが投下後、保存
していた文章を誤って消してしまったので…

53 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 10:33:24 ID:tgYzGpTX0
保守

54 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 13:21:06 ID:pvPkcwjN0
新スレ乙〜〜〜!!!

55 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 13:22:53 ID:tJbOgoV20
(@ω@)保守

56 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 17:35:39 ID:XU3mJBxt0
保守

57 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 18:28:49 ID:XU3mJBxt0
保守保守

58 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 19:30:35 ID:7uUvzPK+0
hosyu

59 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 19:31:10 ID:7uUvzPK+0
保守

60 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 19:31:35 ID:7uUvzPK+0
捕手

61 :(1/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/02/21 19:36:10 ID:xx4K2Z+x0

18.用兵論指南

「話とちゃうやないですか!」
椅子から腰を浮かせ、岡田は叫んだ。平塚と中西は落ち着くようにと手振りで主張するも
のの、逆に『出て行け!』のジェスチャーを返され顔を見合わせる。
「どういうことですのん!
 和田も伊藤もロクに働けへん!おかげでコケにされましたわ!」
派手に唾が飛び、携帯電話を握り締めた右手は興奮のあまり震えている。しかし岡田の激
昂は、電波の向こうの人間には何の影響も及ぼさないようだった。冷静な声が答える。
「君には目的を遂げるのに十分な人員が与えられている筈だよ。
 これは疑いようもないことだ。後は君の手腕次第だ」
「手腕も何も、言うこと聞かへんのにどないせいと仰るんですか!」
岡田は空いた手で机を叩いた。烏龍茶の入っていた紙コップが倒れる。平田が慌てて机上
に散乱する資料をかき集め、取り上げた。
「それがミスだというんだ。本人にとって突拍子もない命令を出したんじゃないのか?
 ホイホイと簡単にロボットみたいな人間は作れんよ。
 判断力を抑えてあるだけだと、あらかじめ断っておいたはずだ。」
電話口に含み笑いを聞く。岡田の血圧は上昇の一途である。


62 :(2/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/02/21 19:36:30 ID:xx4K2Z+x0

「ある戦力で戦うのが監督の仕事だろう?
 不満なら薬が切れてから説得したらどうなのかね?力を貸してくれと」
そんなん無理や!と岡田は言わなかった。言えば墓穴を掘るだけだと流石に予想がつく。
替わりに獣じみた唸り声が歯の間から漏れた。
「もちろん現場の難しさは理解しているよ。
 だからこそ何枚もカードを用意してあるんじゃないか。
 早速使ったらどうかね?出し惜しみする余裕はないだろう?」
一方的な助言の後に、回線がぷつりと切れた。岡田は携帯電話を投げつけようと振りかぶ
ったが、結局できずにのろのろと手を下ろして項垂れた。
「俺らは…何しとるんやろうな…」
言ってしまってから、岡田は後悔した。顔を上げると、苦汁を飲んだようなコーチ陣の表
情がある。刺さる視線が痛い。
「もう、ええわ。例の通信機を持ってきてくれ」
岡田は弱弱しい口調で言い、パイプ椅子の上に沈みこんだ。三人のコーチの視線から逃れ
ようと首を回すと、部屋のドアの側にいた男と目が合う。

身じろぎもしないので、すっかりその存在を忘れていた。膝の上に巻かれた包帯に染み通
る血の色だけが、彼が生きている証の様ですらある。彫像のように、彼は動かない。
八木裕は瞬きもせず、じっと岡田を見ていた。自由ならぬ片足が支えるべきものを背中を
壁に預けることで補い、彼はすべての顛末を見ていた。打席の目だ。
己の心中まで見透かされるようで、岡田は慌てて顔を両手で覆う。
まだ罵声のひとつも浴びせられたほうがましや、と岡田は自分の作り出した小さな闇の中
でひっそりと零した。

【残り44人】

63 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 21:25:25 ID:E8bDsTbK0
ほしゅ

64 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/21 21:26:13 ID:E8bDsTbK0
捕手

65 :再投下(1/3):05/02/21 23:05:06 ID:MJ3vDeVi0
では514さんに代わって投下

38.孤独と空虚
−−いっそ自分も後を追おうか
海岸を歩きながら揺れる波を見て、ふと考えたが死の直前の福原の笑みと遺言が
、関本をまだこの世界に留まらせていた。福原が崖の向こう側に消えてから太陽
が真上にくるまで―昼の放送があるまで関本はずっと崖に座ったままだった。風
が容赦なく吹き付けるため、関本の体は随分と冷え切っていたが、関本はそこか
ら動こうとはしなかった。否、動けなかった。
福原が飛び降りるのを目の当たりにしても、関本には福原の死を受け入れられな
かった。飛び降りておいて、実はそんな断崖じゃなくて浅い岩場あたりに立って
、迂回して自分の後ろから現れるんじゃないか?『アホ、騙されんなよ』とか言
って、いつも通り笑って−−
そんな訳はない。福原は死んでしまった。そして自分は止められなかった。あの
時銃を突き付けられていても、来るなと言われても、自分は止めるべきではなか
ったのか。だって、福原の銃―グロック17には弾が入っていなかったのだから。
福原が飛び降りた後、関本は泣きながら福原の荷物を集めた。その時に、グロッ
ク17も手元に引き寄せた。そこまではなんでもなかった。だが、カバンを開けた
時、関本は打ちのめされた。慌てて、グロック17を手に取って確認する。そう、
マガジンは全てカバンの中にあったのだ。
福原はどうあっても死ぬ気だった。きっと自分が止めても彼は死を選んだだろう
。それならばあの時自分が福原の最期を見届けた事は、福原にとってある意味幸
せな―少なくとも彼にとっては心残りのない事だったんだろうか。だが、関本が
いくら自問自答しても答えを与えてくれる福原はいない。せめて自
分に出来るのは福原が安らかに逝くように願う事と約束を守る事くらいしかない。
どうしようもない虚しさを引きずりながら。
「福原さん、二岡さんに伝えるから。」
もう何度振り返ったか分からないが、関本はゆっくりと福原が飛び降りた崖を振り
返る。関本は、福原が飛んだ崖の下を見てはいない。見たいとも思わなかった。



66 :再投下(2/3):05/02/21 23:05:40 ID:MJ3vDeVi0
地図を片手に海岸沿いに、木々や岩に身を隠しながら歩いていく。当面の目標は誰
か人に会うことだ。まともな(このまともな、という言葉が引っ掛かる)人に出会え
れば越した事はない。
周りを見渡せば、穏やかな海が広がっている。きっと夏になれば地元民が泳ぎにく
る憩いの海だろう。だがそんな白い砂浜に、違和感のある影が見えた。
「?」
周りに人の気配がない事を確認して、影に近寄る。だがあと数歩の所で止まった。
砂に液体が広がり奇妙な模様を作っている。それが白と赤だから余計生々しく、
非現実感すらあったが,肺に絡みつくような濃厚な血の匂いがそれを幻だと教えて
くれない。俯せになったその背中から足にかけて無数の穴が開いて、背番号も名前も
判別しづらい。だが、顔で誰なのかはすぐ分かった。
「筒井……。」
血は乾ききっていない。まだ死んでそんなに時間は経ってないのだろう。屈んで
、顔を覗き込んだ。半開きの唇からは血が流れ砂が貼り付き、閉じられた瞼から
は涙の筋が残っていた。無念の涙だろうか。それとも自分を殺した人間への恨み
の涙だろうか。
震える手で筒井に触れる。手のひらやユニフォームが赤く汚れていくが関本は構
わなかった。うつ伏せの身体を持ち上げ抱えると、海の家の残骸のような建物に
運び込んだ。何でもいいから何かしてやりたかったのだ。自己満足だと言われても、
見過ごすことが出来なかった。
筒井の身体を仰向けに寝かせる。胸の前で手を組ませようと思ったが、固く握られ
た拳は死後硬直が始まっているのか開かせる事ができず、諦めた。




67 :再投下(3/3):05/02/21 23:06:13 ID:MJ3vDeVi0

「ごめんな。」
何に謝ったのか、関本自身にもわからない。それでも口をついて出た言葉は関本の
正直な気持ちだ。
何か言葉を発する度に、心が重くなる。それは自分が背負わなければいけない痛み
であり、使命感のようなものに近かった。涙を流しても減ることはない。決して
降ろすことはできない、重く冷たい虚しさ。
「もう誰かが死んでるのを見るのは嫌や…。」
天を仰ぎ、関本は、無性に誰かに会いたくなった。自分と同じように、消せない
虚しさやどうしようもない悲しみや――怒りを持つ、生きている人に。


ゲーム開始からもうすぐ20時間が経過しようとしている。だが関本は、まだ生きた
仲間に出会えていない。

【残り38人】



68 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/22 00:14:40 ID:tsbCOhu40
GJです

69 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/22 09:44:18 ID:ykEDRD8I0
>>65
ありがd。GJです。

70 :514:05/02/22 14:24:35 ID:YVl543EvO
>>65-67
ありがとうございます。お手数おかけしました。

71 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/22 15:40:55 ID:Cr1dmaMr0
>>61-62
49氏、乙です!久々の新作!

72 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/22 18:54:45 ID:dE8o6nWE0
保守。

73 :保管庫”管理”人:05/02/22 20:19:31 ID:UT/cR7SS0
いつのまにか新スレが!!遅ればせながら1さん乙でした!

>>65-67
あれ、保管してませんか…?それが37章でいいんですよね?

74 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/22 21:09:45 ID:ArMHolu00
祝・復活! 1さん、ありがとうございます
こちらも紹介しておきます

暫定HTBR板(会議場と雑談スレあり。本スレの避難所的役割も)
ttp://jbbs.livedoor.jp/sports/20081/

37章、すでに保管されていましたよね
939さんのリストには未反映だったと思いますが

75 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/22 21:54:51 ID:0sYgFvpH0
ほしゅん

76 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/23 11:50:09 ID:lbGMEBUC0





77 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/23 18:45:06 ID:n5pspOmk0
捕手

78 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 12:11:09 ID:lotl1tWd0
保守

79 :615(1/8):05/02/24 15:09:22 ID:BlPu9mK00
>>67つづき

38.呼びかけ

パン……
残響を伴う乾いた音に、久慈照嘉(背番号32)は歩みを止めた。
(なんだ?)
この状況下だ。銃を発砲した音と考えるのが妥当だろう。
じっと耳を澄ましてみる。
……と、森のざわめきの間にかすかな人の声が聞こえた。
(おいおい)
久慈は今、午後3時からの禁止エリア付近を北に向かって進んでいる。
風に乗って声や音がここまで届いているなら、海からの風だろうと推測された。
人との接触を避けようと思えば、今すぐここから離れるのが得策だ。
―――どうする?
脳裏に上坂の顔が浮かぶ。
ゲームが始まった当初、誰かと合流してこの状況を打開するアイデアを出し合え
ればと思っていた久慈にとって、体育館を出てはじめて出会ったチームメイトで
ある上坂に襲いかかられたことは大きなショックだった。一方的に向けられる殺
意は久慈の意志を完全に無視し、言葉の存在さえも否定した。向かい合っている
のに、同じ空間にいないかのようなあの感覚。
話し合うなんてことは互いにその気がなければできない。
しかし。
―――あの時、上坂を説得していれば、あいつは死ななかったかもしれない。
今朝の島内放送で読み上げられた死亡者リストの中に、上坂の名前を認めてから
久慈は何度も自問し続けていた。無意味な“たられば”の奔流が頭の中を駆け回る。
―――もし、説得に成功していたとしても、その先は……?
そうして行き着くのは真っ暗な想像の海だ。
考えれば考えるほど、答えはどんどん遠のいていった。

80 :615(2/8):05/02/24 15:09:50 ID:BlPu9mK00
パン……
再びの銃声。
ほとんど反射的に久慈は海の方へ向かった。自然と歩調が早くなる。
(とりあえず、見えるところまで)
状況は全くわからない。ただ、銃を発砲してしまう心理状態にある人間が冷静な
判断力を持ち合わせているとは思えないし、思いたくもなかった。
自分が出ていって事態が良くなるとは言い切れない。けれども、ここで無視して
後で後悔するのは二度とごめんだった。


木々が途切れ始め、海と空の青がはっきりと見えた。
その中に一人のシルエット。
「うっ…ううー……ああぁ……」
あたりに響いているのは、噛みしめるような泣き声だ。それは久慈が森をくぐって
いる途中からずっと聞こえていた。
森の切れ目から5、6メートル手前で足を止める。大声で泣き続ける人物は、久慈か
ら見て身体を左に向けており、横顔を見るかたちになるため顔がよくわからない上、
背番号もはっきりと読みとれなかった。
(誰だ?)
両膝をついて泣きじゃくる彼の手にはいまだ銃が握られている。視線を左に巡ら
すと、誰かが倒れているのが確認できた。
(撃ちあった……のか?)
もう少し近づこうと斜めに数歩進んだ時、肩に掛けていたバッグが木の枝に引っ
かかり、ドサリと音をたてて落ちた。
(しまった)

81 :615(3/8):05/02/24 15:11:05 ID:BlPu9mK00

「誰!?」
嗚咽をぴたりと止め誰何してきた彼は、振り向いたこちらに銃を構えた。
「誰かいるのか?」
(……出ていくしかないか)
いないふりをしても、近づかれれば存在はすぐにバレるだろう。
(頼むぞ)
彼に自分の言葉が届くことを祈りながら、久慈はゆっくりと足を踏み出した。


秋の日差しがじんわりと身体を射る。
久慈は両手を顔の横にかかげ、銃を向けてくる彼の真正面に立った。
相手との距離はまだだいぶあるものの、顔はちゃんと見える。が。
(困ったな……誰だっけ?)
名前がわからない。
二軍の若い選手だ。キャンプは二軍スタートだったので見覚えはある。思いつく
名前もいくつかあるが、いまいち顔と一致しなかった。
この距離では叫ばなければ会話をしようと思っても成り立たない。
(もうちょっと近付かなきゃダメだよなぁ)
銃は真っ直ぐにこちらを向いている。黒い銃口はまるで地獄の入り口だ。見るな
と自分に言い聞かせても、目はそこに吸い寄せられる。全力疾走した後のように
心臓が早鐘を打ち、足がカクカクと震えた。極度の緊張で気を失いそうだ。
―――素人が銃を撃って命中する確率は低いだろう。
すぐ近くに誰か倒れている現状にそぐわない考えではあるが、今はそんな不確定
要素を拠り所にするしかない。
意を決した久慈はつま先にじりじりと力を入れた。

82 :615(4/8):05/02/24 15:11:45 ID:BlPu9mK00

(撃たないでくれよ)
そろり、と一歩近づく。
(……よし)
緊張に包まれた空気に変化は起きなかった。
(そのままだぞ、そのまま)
久慈は目線をずらさないように気をつけながら、二歩、三歩とゆっくり進んだ。
ほんの少しの時間が、何時間にも感じられる。自分と相手の距離は少しずつ縮まり、
少々大きな声を出せば会話はできそうなところまできた。
(あとちょっと……)
「来るな!」
突然の制止の言葉に、久慈はぎくりと動きを止めた。
「俺は……」
彼はそう言ってうつむき、また嗚咽をもらし始めた。
泣きたいのはこっちだ。久慈は急激に上がった心拍数を押さえるように、大きく
息を吐いた。
(せめて銃おろして泣けよ)
それきり、泣くばかりで向こうは何も言ってこない。このままでは埒のあきよう
もないだろう。久慈は思い切って声をかけた。
「……ねぇ」
ばっと顔を上げた彼は、あわてて両手に持っている銃を握り直した。
「撃つなよ!」
久慈のとっさの叫びに、彼の肩がびくりと揺れる。
「撃たないで!」
いつ撃たれてもおかしくない。

83 :615(5/8):05/02/24 15:12:06 ID:BlPu9mK00

自分が鉄の弾に貫かれて倒れ込む姿が頭をかすめる。
そんな想像を無理矢理頭から引き剥がし、久慈は言うべき言葉を必死で考えた。
―――やめなさい?信じてくれ?……もう!何て言ったらいいんだ!
あせりと恐怖でうまく考えがまとまらない。それ以前に、こんな状況下での最良
の言葉なんてわかるはずもなかった。当然だ。銃で威嚇してくる相手にかける言
葉など、学校でも職場でも習わないのだから。
(とにかく、何か言わないと)
「なにもしないよ、武器も持ってない。ただ」
「俺は!」
強い遮りに、久慈は言いかけた言葉を飲み込んだ。
「人殺しなんです、だから、あなたを殺すことだって、でき……」
途切れ途切れに発せられた言葉は、少しずつトーンダウンし、最後の方は聞き取
れなかった。
「……俺を殺したいの?」
「……」
答えはない。かわりに、銃を持つ腕がぶるぶると大きく震えるた。ずっと泣き続
けている彼の顔は真っ赤だ。その赤い顔は人を殺したがっているようにはとても
見えない。久慈は止められていた足を、一歩動かした。
「来ないでください!撃ちますよ!」
「わかった!わかったから、撃つ前に教えてよ」
「俺が、誰を殺したか、ですか?」
「違う違う。……どうしてそんなに泣いてるの?」
「!」

84 :615(6/8):05/02/24 15:12:44 ID:BlPu9mK00

彼の震えは腕から身体全体へ広がっている。錯乱状態と言っていいだろう。銃口
は相変わらずこちらに向いたままだ。背筋がスースーする。
―――怖い。
「まだ撃たないでよ!質問に答えられる?」
彼は何度も首を横に振った。
「わからない?」
反応なし。しゃくりあげる荒い息が返事を邪魔しているのだろうか。
「人殺しって勘違いじゃない?」
彼は再び首を横に振り、視線を左に移した。久慈も同様に視線をやる。その先に
倒れ込んでいる人物は久慈が見た時と同じ格好のままで、動いた様子はない。
「……ついさっきも、あ、浅井さんを、俺が」
(浅井か)
やっと正体をつかめた浅井良(背番号12)は、ぴくりとも動かない。ここから
一見しただけで生死の判断をつけることは不可能だ。しかし、久慈に迷っている
暇はなかった。
「大丈夫!生きてるよ!」
「……?」
彼はまた首を左に向けて、倒れている浅井の様子をうかがった。もちろん動かない。
「でも、俺が撃って、倒れた」
「撃たれたショックで気を失ってるだけで、死んでるわけじゃない」
嘘だ。
確認していないのだから、生きているか死んでいるかわかるはずもない。
相手に反論する時間を与えないよう、久慈はたて続けに話しかけた。
「俺もわからないんだ」
―――なぜ、こうして銃なんかを突きつけられなくてはならないのか。

85 :615(7/8):05/02/24 15:13:28 ID:BlPu9mK00

「一緒に考えてくれない?ひとりじゃ不安なんだ」
言いながら、久慈は再びゆっくりと足を前に進めた。
「俺なんか……人を、殺したのに」
「本質はそこじゃない」
「……」
「おかしいよね。俺達は野球選手で、殺し屋じゃないんだから」
一歩。一歩。足をするようにして前進する。近づかれていることに気づいている
のかいないのか、彼は何も言ってこない。
「どうしてこうなったか、これから考えよう。遅くはないよ」
この殺人ゲームをするに至った過程を監督に説明されはしたが、人が死ぬ理由に
しては弱すぎる。とても納得できるものではない。
「俺に力を貸してよ」
そう言ったところで足を止めた久慈は、目の前の彼の顔を見て、内心苦笑した。
(ひどい顔だな)
泣き続ける真っ赤な顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、それこそわけがわからな
い状態だ。相手との距離はほんの数メートル。今発砲すれば、素人でも命中させ
られるだろう。でも、もう彼は撃ってこないんじゃないかと久慈は思った。
「俺を撃たないでくれる?」
「……」
少しの沈黙の後、彼はぱっと銃から手を離したかと思うと、久慈に駆け寄り腰に
がばっと抱きついてきた。
「わっ」
彼の両手からこぼれ落ちた銃に目を奪われていた久慈は、腰にタックルをくらう
という予想外の展開に踏ん張りきれず、背中から地面に倒れ込んだ。

86 :615(8/8):05/02/24 15:14:05 ID:BlPu9mK00

(いってぇ)
目を開けて見えたのは、真っ青な空。さっきまでは全く聞こえなかった波の音が
耳に届く。汗で湿ったユニフォームを通して、冷たい風が身体をなでた。
―――なんとか、死なずにすんだ。
「うっ……ふっ、うう……」
波の音よりはるかに近くで聞こえる嗚咽。彼は相変わらず泣きっぱなしらしい。
上半身を起こした久慈は、腰にしがみついてくる後輩の背中をなだめるように何
度もたたいた。その背中に記されている「ARAI 49」の番号。
(新井、ね)
彼―――新井智(背番号49)の心を支配していたのは恐怖と後悔の念だ。
殺されたくないという恐怖。その恐怖から逃れるために人を手にかける。すると
恐怖は人を傷つけてしまったという後悔に変わる。その繰り返し……。
(早くなんとかしないと)
人を殺さずにゴールに着く方法があるはずだ。
目の前一面に広がる海を見ながら、久慈はチームメイトの顔を思い起こした。
金本、桧山、矢野、若い奴にだって頼りになりそうな同僚は何人もいる。みんな
知恵を出してくれるだろう。自分もベテランだ。その中に入らなければならない。
そして―――
誰より、球団と選手を繋ぐ選手会長。言葉ではなく、その実力と実績でチームを
引っ張る彼。
(チームリーダーはお前なんだから)
久慈は思い浮かべた静かな横顔に、心の中で呼びかけた。
(選択を間違えるなよ、今岡)

【残り38人】


87 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 15:25:39 ID:lotl1tWd0
>>615
乙です
久慈流石うまいな

88 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 15:33:22 ID:OzFTrfPN0
615氏、乙です!
今岡・・・

89 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 16:05:29 ID:qLgMTyL20
カコイイ…御大&太陽のくだりと比較すると泣ける…

90 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 16:12:27 ID:Os+FU5rgO
このあたりが御大と久慈さんのキャラの違いだなぁと思わず納得してしまった。
新井は石毛を殺したあとに浅井もやっちゃったのか・・・

91 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 16:19:26 ID:qLgMTyL20
太陽じゃなくて球児でした…すいませんお恥ずかしい

92 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 16:29:03 ID:N2Mo4uzuO
ベテランらしいお仕事だ・・

93 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 16:39:13 ID:lotl1tWd0
>>90
石毛やったのって安藤じゃなかったけ?

94 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 17:56:57 ID:TjgHwa9t0
保守

95 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/24 18:34:27 ID:cWbgGYm60
>93 リレーの15話を参照

96 :924(1/4):05/02/24 23:43:47 ID:NueI20MY0
>>86より

39.問題外

鳥居をくぐり、長く急な石段を登ると、木々に囲まれたささやかな祠があった。
拳銃をポケットに差し、その前で静かに手を合わせる。こんなことをしても
所詮は気休めに過ぎないと分かっている。それでも、真剣に願った。
(これ以上、誰も死にませんように。残りの皆で生きて帰れますように)
祈り終わると、小宮山は再びワルサーPPK/Sを抜き出した。

「よお、こんなとこで神頼みか?」
突然声をかけられ、小宮山はびくりと振り向いた。かすかな笑みを浮かべ、
石段の前に桜井が立っていた。生存者の中では最も年の近い先輩。
だが、そのユニフォームをいろどる多量の血を見れば、彼が人を害したことは
疑いようもない。小宮山の心は急速に暗雲で埋めつくされていった。祈った
そばからこんなのありか?と文句をつける余裕もなく。

「ふうん、ええもん持ってるな。もう誰か撃ってみたりしたんか?」
小宮山は返事せず、というよりできず、桜井が視線を送る拳銃を握り締め、
恐怖を懸命に抑えつけながら彼に向き直った。
「まあ、無理やろな。お前には。――小宮山、そいつを俺によこせや。
 そしたら何もせえへん」
右手に斧を持つ桜井は左手のひらを上に向けて差し出した。

「そんな……渡したら、どうせ……殺すんでしょう?」
ようやく発した声は我ながらひどく震えているのがよく分かった。自分で口に
した「殺す」という言葉に小宮山の全身は総毛立った。そうだ、このままでは
きっと殺される。田村、そして萱島のように。今までは直接遭遇することの
なかった死の危険がついに訪れたのだ。

97 :924(2/4):05/02/24 23:46:22 ID:NueI20MY0
「嘘やない。お前なんか殺してもしゃあない」
桜井は軽く首を横に振った。だが、信じられるわけがない。
「……できません。こ……来ないで下さい」
後ずさりつつ小宮山は胸の前でぎこちなく銃を構えた。

(え……っと、安全装置を、はずすんだっけ?)
もたつきながらも引き金に指をかけるところまでこぎつけた。弾はセット
されている。一度も撃ったことはないが、この距離ならおそらく当たるだろう。
しかし、自分には人を撃つことなどできない。小宮山は今もそう思っていた。
だから、あくまで威嚇のつもりだった。
「手ぇ震えてるぞ。そんなんで撃てるんか?」
桜井は動じる気配もなく、相変わらず薄く笑いながら近付いてくる。どうやら、
撃てないものとたかをくくっているらしい。悔しいが、そのとおりだ。

(頼みますから、来ないで下さい!)
小宮山は思い切って引き金を引いた。反動はさほどではなかったが、銃声に
思わず目を閉じる。桜井も一瞬目をつむったが、発砲の直前、小宮山が
意識的に銃口をそらすのを見逃さなかったため、あまり驚いた様子は
なかった。弾丸は桜井の左肩の横を通り過ぎて行った。

再び目を開けた時、小宮山は自分に向かって猛然と突進してくる桜井を見た。
とっさに身をひるがえして駆け出そうとしたが、遅かった。左腕をつかまれるが
早いか、背骨が折れるかと思うほどの一撃を受けた。斧のみねで背中を
したたか打ちすえられ、小宮山は歯を食いしばりながらよろめいた。そこへ
続く一撃が見舞われ、倒れこんだところを押さえつけられた。拳銃は
手放さなかったが、それもすぐにもぎ取られた。

98 :924(3/4):05/02/24 23:48:44 ID:NueI20MY0
「田村とかに比べたらマシやけど、お前もたいがい甘いな」
力なく伏せる小宮山の上から桜井の声が降ってきた。
「た……むら……さん?」
背中の激痛のせいで思うように声が出ない。小宮山は顔をゆがめながら
思い出していた。忘れもしない、体育館を出た直後、自分の心に底知れぬ
戦慄を投げかけたのが、血に染まった田村の変わり果てた姿だった。

「……まさか、田村さんを……あんなひどいこと」
「見たんか? ああ、俺がやった。あいつも松下も人が好すぎや。
松下なんか、この血だらけのユニ見ても騙されるんやから」
あざ笑うでもなく誇るでもなく、ただ淡々と桜井は言ってのけた。
「松下さんまで? それに『騙されるんやから』って、騙して殺したって
 ことですか!? どうして、そんな――」

背の痛みをよそに小宮山はわめいた。しかし、首の後ろに響いた軽い衝撃に
黙らせられた。見えないが、ワルサーの銃口が押し当てられたに違い
なかった。自分を苦しめたもう一つの恐ろしい光景がフラッシュバックする。
あの時と同じだ。自分はアイスピックではなく銃で撃ち抜かれるのだ。
もう、おしまいだ。観念したように小宮山は固く目を閉じた。

「あ、これか」
唐突な桜井の一言とともに、首筋を圧していた気味悪い感触がふっと消えた。
小宮山はそれでもじっと動けなかったが、しばらくして背にのしかかっていた
重みが失せたことに気付き、おそるおそる目を開けた。桜井は空いている
左手で小宮山の肩にかかったカバンの中身をぶちまけ、予備のマガジンが
入った袋を取り出し、自分のカバンに移していた。その作業が終わり、
立ち上がったところだった。

99 :924(4/4):05/02/24 23:50:56 ID:NueI20MY0
小宮山はゆっくり身体を起こし、おずおずと桜井を見上げた。
「言うたやろ。お前なんか殺してもしゃあないって。だいたい殺すつもり
やったら最初にこいつでバッサリや」
桜井は小宮山の疑問を読んだように言うと、傍らに置いてあった斧を拾った。
「ほっといても、お前はたぶん生き残れへん。俺はべつに人殺しが楽しい
 わけやないし、武器も大事に使わんとな」

その言葉を最後に桜井は、小宮山には一瞥もくれず歩き出した。小宮山は
何か言おうとしたが、言葉の代わりにまた涙がこぼれはじめた。命が助かり
ホッとしたのか? それもあるが、あまりに自分が情けないからだ。要するに、
なめられているのだ。歯牙にもかけられていないのだ。殺すほどの存在では
ないから生かされたのだ。だが、現に終始身くだされたまま無抵抗に等しい
状態で武器を取り上げられてしまった。そんな自分が嫌になる。
(どうして、こんなに弱いんだろう?)
服についた土を払うことも散らばったカバンの中身を戻すことも忘れ、
小宮山は地面に両手をついて嗚咽した。

涙で赤くはれた顔を上げると、石段を降りかけている桜井の右手に握られた
ワルサーPPK/Sが目についた。先ほどまで自分の持ち物だった銃だ。
ほうっておけば、あれが誰かの命を奪う。
(駄目だ。そんなこと――)
小宮山は脱げ落ちた帽子だけをしっかりとかぶり直した。そしてふらふらと
立ち上がり、石段の向こうに消えつつある桜井の背中をおぼつかない
足取りで追った。

【残り38人】


100 :924(1/4):05/02/24 23:53:22 ID:NueI20MY0
続けて行きます

40.生かすか殺すか

「……待って、下さい」
涙声でつまりながら、小宮山は石段の最上段から桜井に声をかけた。
「その銃、どうするんですか? また、誰かを……殺すんですか?」
桜井は意外にもすぐ立ち止まり、振り向いた。
「銃ってのは、そのためのもんやろ」
「もう……やめませんか。人殺しが楽しいわけじゃないんでしょう?」
「楽しいわけやないけど嫌でもない。生き残るためにはしゃあない。
 これはそういうゲームや」
涼しい顔でそう言うと、桜井はもとのように石段を降りはじめた。

「納得、できるんですか? こんなゲームに……」
「お前もしつこいな。せっかく殺さんといてやったのに」
桜井はもう一度振り返った。いい加減にしないと殺すぞ――射るような
眼差しがそう言っている。首に銃口を突きつけられた時のように小宮山は
口を閉ざし、硬直した。その様子を見た桜井はまた背中を向けて歩きだした。
おそらく、これ以上何か言っても無駄だろう。
(でも、俺はこの人を止めないと――)
小宮山は一つ大きく息を吸って吐くと、地面を蹴って、跳んだ。

「な――」
桜井には完全に予想外の攻撃だった。背中に強烈な体当たりを食らわされた
彼はバランスを崩して転倒し、小宮山もまた跡を追うように石段を転がり
落ちた。周囲の景色がぐるぐる回る中、二人は折り重なって鳥居の手前の
地面に叩きつけられた。上になった小宮山はすぐさま顔を上げ、身体中の
痛みをこらえて辺りを見回した。頭の先に帽子が二つ転がり、向こうに
ワルサーが落ちていた。それを取ろうと這いながら手をのばしたが、その
瞬間、下からこぶしで思いきりみぞおちを突き上げられた。桜井は素早く
身体を起こすと、もんどり打つ小宮山に飛びかかり、仰向けに倒した。

101 :924(2/4):05/02/24 23:55:04 ID:NueI20MY0
「このやろぉ……」
小宮山を鋭くにらみつけると、桜井は乱暴に両手を首にかけて絞めに
かかった。その顔は怒りで真っ赤に染まり、先ほどまでの冷たくも余裕に
満ちた表情とはまるで違う鬼のような形相だった。今度こそは、本気で殺そうと
している。小宮山は絡みつく手を懸命にほどこうとしたが、凄まじい力だった。
あらがえばあらがうほど、ぐいぐいと指が喉元に深く食い込んでくる。顔が膨張
してゆくような感覚にとらわれ、目からは苦痛の涙が、口の端からは唾液が
流れ落ちた。

それでも小宮山はあがくことをやめなかった。記憶を頼りに右手で必死に
地面を探り、同時に左手を桜井の顔面にのばし、目に、鼻に、頬に爪を立て、
無我夢中で引っかいた。桜井は思わず手の力をゆるめ、顔をそむけた。
彼の意識は、そこで途絶えた。

絞め殺されることがいかに苦しいかを思い知りながら、小宮山はようやく
解放された喉に手を当て激しく咳き込んだ。耳がじんじんと鳴り、頭が
くらくらする。感情とは無関係にあふれる涙はまだ止まらない。それらが
収まった時、はじめて自分が何をしたかに気付いた。

すぐそばに桜井が倒れ伏していた。ぐったりと目を閉じ、動かない。頭からは
かなりの血が流れており、その傍らには、みねの部分がわずかに赤く染まった
斧が転がっている。小宮山は焦点の定まらない目で桜井と斧を交互に
見つめた。どうやって桜井の身体の下から這い出たかはよく憶えていない。
しかし、文字通り死に物狂いで斧を掴み、自分の爪を避けようと首をひねった
彼の頭を殴りつけた時の手ごたえは生々しくよみがえってきた。

102 :924(3/4):05/02/24 23:57:12 ID:NueI20MY0
一瞬、頭が真っ白になった後、全身ががくがくと震えだした。昨日から幾度と
なく体感したそれは死におびえてのものだった。今は違う。自分が取り返しの
つかないことをしたという恐怖から来る震えだ。
(落ち着け! ……まだ分からないだろ!)
胸の前で腕を交差させ、両の二の腕をぎゅっと強くつかんだ。殺したと
決まったわけではない。確かめなければ。

小宮山はおずおずと桜井の片手を取り、手首に指を当てた。手の震えが
止まらないためなかなか分からない。殺人の罪におののく一方で、今にも
相手が目を覚まして襲いかかってくるのではないかという矛盾した恐れと
戦いながら何度か繰り返し、やっとのことで確信を得た。はあーっと大きく息を
吐き、小宮山は両手を地面についた。脈は確かに、指の下で一定のリズムを
刻んでいた。

(だけど、桜井さんをどうすればいい?)
束の間の安堵はすぐに困惑へと変化した。気を失った桜井をこのままにして
去った場合、目覚めれば間違いなくまた誰かを手にかけようとするはずだ。
これまでに少なくとも二人の命を奪い、自分も殺されかけたのだから。
かと言って、とても一緒に行動することはできない。悲しいが、自分には
彼を止めるだけの力はない。

小宮山の心はぐらぐらと揺れた。桜井を止めたい。その一心で彼に飛び
かかった。あの時は具体的なことは何も頭になかったが、今、そのために
取れる確実な方法は一つしかない。思いもよらなかった恐ろしい考えに
思わず頭を大きく左右に振った。
(いや、殺さなくても、武器を取り上げれば――)
そして丸腰にされた桜井はどうなる? 誰かに殺されるか、新たに武器を
手に入れようとするかだろう。結局、同じことなのだ。

103 :924(4/4):05/02/24 23:59:31 ID:NueI20MY0
小宮山はしばらく考え続け、思いつめた顔で斧を手に取った。だが、この
凶器が引き起こす凄惨な光景――アイスピックの比ではないだろう――を
想像し、また地面に置いた。ため息をつき、今度は離れた場所に転がった
ままになっていたワルサーPPK/Sを拾い上げる。

自分は誰も殺せないし、殺したくないと思った。何があってもこの狂った
ゲームに呑み込まれまいとも思った。この考えに間違いはないはずだ。
だが、このまま桜井を生かしておけば、新たな犠牲者を産み出しかねない。
そうと知りながら放置して去ることは、誰も殺したくないからと言えば
聞こえはいいが、実は非常に無責任ではないか。

小宮山は桜井の傍らに膝をついた。
「……桜井さん、俺にはこうする以外にあなたを止められません。申し訳ない
 けれど、あなたを殺します」
しかし、今も殺したくないという気持ちは変わらない。自分は人を殺して平気で
いられるほど太い神経は持っていない。その罪と重みと苦しみすべてを
背負って生きて行けるほど強くもない。
「だから、その後で――俺も死にます」
ゆっくりと銃を構え、小宮山は桜井の頭に照準を合わせた。その手はもはや
震えてはいなかった。

【残り38人】

104 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/25 00:08:36 ID:hpM/DN0L0
924氏、乙です!!

105 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/25 00:15:51 ID:MLOL4f6W0
連投キタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!職人さん乙です!
バンビ…

106 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/25 01:26:28 ID:S9irhgXA0
職人さん連投乙です!・゚・(ノД`)・゚・。

107 :328 ◆U/eDuwct8o :05/02/25 22:11:19 ID:tORW12GA0
第十一章・気骨/負けられない思い

“上には上がいる”
得てして、勝負ごとの世界にはこの言葉がついてまわる。
殊に闘い続ける者たちは、この言葉を信じようとしない。
いいや、敢えて信じたくはないのだろう。

…生き残るための試練は、決してまだ終わったわけではなかった。


熱と雨を運ぶ風が、野口の頬を乱暴に撫でた。
『ぐふ、ぐふふぅ…』
男は不気味に嗤った。
「………っ」
どくん、どくん……!
生唾を飲み込む野口の心臓は、さざなみで満たされた。

(間違いない…)
野口は悟った。
この者こそ、高山の言う最強の戦士。
真に狂える者。狂人の中の狂人だ。

108 :328 ◆U/eDuwct8o :05/02/25 22:12:15 ID:tORW12GA0
「名は何と云う…?」
野口は問う。
だが、本当は訊くまでもなかった。
なぜなら、その者は野口が最も良く知るものの一人だったからだ。

『オレは…岡田、彰布…』
――なぜなら彼は、他でもない自分たちのチームの、監督だったからだ。

『――オレがクリンナップよ』
「監督…? わ、若い……」
そう、そして何より面妖なことには、その岡田は若かった。
だが若き岡田のおもてには、現在と何ら変わらぬ歪んだ笑みを浮かんでいる。
若き岡田は、右の頬や右腕が一部焼け爛れている。
野口は知らない、それが久慈の死による炎であることが。
若き岡田は、その身体に夥しく真紅の血糊を纏っている。
野口は知らない、それが仲間の死による返り血であることを。

だが野口は知っていた。自分にも、仲間と同じ災厄が降りかかってしまったということを。
決して逃れられない現実として…。


109 :328 ◆U/eDuwct8o :05/02/25 22:13:15 ID:tORW12GA0
その頃、左翼のあたりでは赤星と金本が雨宿りをしていた。
だが強い雨風の中ではあまり効果があがらず、すでにずぶ濡れになっている二人は、もう濡れることを阻止しようという考えはほとんどなかった。
「いいんですか、金本さん」
「んー?」
唐突に聞いてくる赤星に、金本はその表情に疑問符を浮かべた。
「野口さんですよ。藪さんたちがいなくなったから、一人になってるんじゃ…」
「ああ…」
「ノリで別れちゃったけど、合流したほうがいいんじゃないですか?」
「いや、ええやろ別に」
「えっ?」
「野口には目的があるからの。一緒におったら邪魔になるやろ」
「そうですかぁ? 目的ならオレたちも同じようなものじゃないですか」
「そやったら、何もせんでもそのうち会うやろ」
「あ〜」
適当なことを言う金本に、赤星は思わず間延びした声をあげた。
「…それもそうですね」


110 :328 ◆U/eDuwct8o :05/02/25 22:14:19 ID:tORW12GA0
同時刻、同じ左翼付近では豪雨と暴風の中、ウィリアムスが駆けていた。
ユニフォームの中にはボウガン。そしてナイフもいくつか隠し持っている。
そして腰には刃渡り70cmほどの忍者刀を差していた。
(ん、あいつらは…)
音を極力消しながら走るウィリアムスは、前方に並んで呆ける赤星と金本を見つけた。
二人はまだウィリアムスに気付いていない。
強襲をしかければ、確実に仕留められるだろう。
だがウィリアムスはそうしなかった。二人の前で足を止めた。
「よう」
その段になって、やっとウィリアムスの存在に二人は気づいた。
「う、ウィリアムス! 何の用だ!?」
赤星は思わず身構え、声を荒げた。

“仮にも同じチームの仲間に対して、哀しい反応だな…”

露骨に警戒心を見せた赤星に対して、不意にウィリアムスの脳裏にそんな感情が浮かんだ。
だがそれもすべて、これまで沢山の仲間を殺してきた己の業というものだ。
そんな弱気な考えを、ウィリアムスはすぐに霧散させた。

111 :328 ◆U/eDuwct8o :05/02/25 22:15:29 ID:tORW12GA0
「そう身構えるな。ここでお前たちと戦う気はない」
「何だって? じゃあ何の用だ!」
「聞きたいことがある」
「………」
ウィリアムスにどうも不審の空気を感じ、赤星は言葉を詰まらせた。
どうやら彼は自分たちに攻撃してくる気はないらしい。
(聞きたい事……? どういうことだ…?)
「お前ら…ランディ・バースがどこに居るか知ってるか?」
返事を待たずに、ウィリアムスはそう問いかけた。
そしてその問いは、赤星の冷静さをさらに奪った。
「バースだって!?」
「そういえば、そんなんがおるらしいわな」
「知らんか…」
二人の反応を見てそう察知したウィリアムスは、舌打ちをしてからもうここには用はないとでも言いたげに踵を返した。
「行った…のか?」
「そうみたいやな」
「…何でオレたちを見逃したんでしょうかね」
「あ〜〜…」
赤星の問いに、金本は間延びした声をあげて考えたあと、適当な結論をつけた。
「面倒くさかったんやろ」
「それもそうですね」
なんだかよくわからないまま、雨が止むまで雨宿りは続く。

112 :328 ◆U/eDuwct8o :05/02/25 22:23:11 ID:tORW12GA0
ども。


新スレおめでとうございます。今回は前スレ>336からの続きです。
このスレはdat落ちさせないようがんばっていきましょう。

113 :542(1/7):05/02/25 23:42:11 ID:dBjXu6iv0
>>103
41.仔猫が牙を持つ

彼らにとって不運だったのは、その家の玄関が引き戸であったという事だ。

ごとん……ぐちゃ、っ。

文字にしてみればそんな音。
「こ、これ、これッ……!!」
ああ。
頭の中に白ペンキでもぶちまけたが如く、思考回路と情報受容回路が
ハングアップしてゆくのをぼんやりと感じていた。きいん。耳の奥で金属音。
ジェットコースターが猛スピードで下り始める時の無重力状態のような、
臓腑を震わせる悪寒が一瞬だけ背筋に絡みついたが、それさえもすぐに
あやふやなものへと変わった。
確かだったのは、江草が自分の左袖をぐっと掴んだ事だけ。
「……あ、あ……」
自分の目がこれ以上ないくらいに見開いているのを認識する。
眼球が乾いて痛い。けれどまぶたが動かない。手も、足も、頭も、唇すらも
ぎっちりと硬直したままで、引きつれたような声を上げる隣の男を宥める事も、
落ち着かせてやる事も出来なかった。
「前川さん」
カラカラ、掠れた声。
壮絶なまでに血みどろになったその名前を呼ぶ。
飛び散った血液。立ち尽くす二人のズボンの裾には細かく赤い斑点。
床にも点々と綺麗な放射線状に血の模様が浮き出ている。倒れた前川の
濡れた唇から、新たにねっとりとした緋色の滴りがつうう、と伝って床に落ち、
その濃い水溜りがぷっくり膨らんだ形のまま薄暗い中で震えていた。

114 :542(2/7):05/02/25 23:43:03 ID:dBjXu6iv0
「!江草、ちょ、しっかりせぇ!」
袖にがくんと負荷が掛かったのに慌てて彼の方を振り返った。左手で頭を
庇うように覆い、右手では指が白くなるくらいに杉山のユニフォームを
握り締めている。その手の中で、刺繍された虎がぐにゃりと歪んだ。
「ごめ……ちょっと、頭、痛くなって……」
「解った、解ったから、とりあえず座り」
力が抜けて滑り落ちた右腕に、それからわき腹に手を回して支えてやると、
江草はごめんともう一度詫びる。
「気分悪ないか?脳貧血かも知れへんな」
かくんと膝を折る彼に声を掛けながら、こんな近くで血だらけの死体を見たら
そりゃ気分は悪いだろうと心の中で呟く。つん、と鼻腔を刺激する血の匂い。
自分だって江草と狩野がいなければ悲鳴をあげていたかも知れない。
「……」
たっぷりとした沈黙がその場を支配した。
江草の傍に屈んだ杉山は後ろを振り返る。気配は感じていたのだが―――
予想通りの光景をそこに見出し、どうしたものかと心底困り果てた。
「杉山さん、それ……」
位置的に全てを見る事は叶わなかったらしい。しかし確実に一部を視界に
捉えているであろう彼―――狩野恵輔が、はっきりとした目鼻立ちを
解りやすい恐怖の形に歪めて、自分の顔を見つめていた。
「狩野、落ち着け」
言っている自分が震え出してしまいそうだった。実際、江草の背中を擦る手は
小刻みに震えているし、咽喉は干上がっている。それを無理矢理押し殺して、
努めて低い、落ち着いた声を出そうとする。
(落ち着くんはコイツやない。俺の方や)
俺まで取り乱したらどうしようもなくなる。落ち着け、落ち着くんだ。
ひたすらそう自分に言い聞かせて、杉山は細く息を吐いた。

115 :542(3/7):05/02/25 23:43:36 ID:dBjXu6iv0
「すぎやまさ」
「落ち着け」
「だって、それ……ッ」
「狩野、落ち着け。何も考えんと深呼吸すんのや。……目ェ閉じて、深呼吸し」
青い顔でこくこくと機械人形のように頷き、言われるままに目を閉じる狩野。
肩からずり落ちた毛布を掴む指先にはやはり血の気がなく、疲弊した表情が
ショックと恐怖とで輪を掛けて悲惨な状態になっている。
肩を何度も大きく上下させ、必死にパニックと戦うその姿は可哀想なくらいに
正常だった。
(免疫、か)
殺された中村泰広に遭遇していなかったらと考えると空恐ろしくなる。
佐藤の遺体はホンモノだったけれど、やや当事者感に欠けていたというのが
実情なのかも知れない。選手たちが混乱と困惑を一様に言い立てる中、
フィクションとしてさえお粗末な筋書きを一方的に説明され、ゲームのように
進行された「佐藤コーチの死体、出現」。
確かにみんなショックを受けていた。確かに死という恐怖を感じていた。
しかし、どこかで自分との一線を引いていたのではないか?
ついさっきまでは割合しっかりしているように見えたのに、目の前に死体を
突きつけられた江草の反応を、狩野の動揺を見て、杉山はそう分析する。
「……二人とも、落ち着いたか?」
落ち着いてくれよ、頼むから。
知らず、握り締めていた銃のグリップが汗で滑る。江草の支給品だ。
(でもこの調子だと俺が持ってたほうが良さそうだな)
勝手にそう結論付ける。構いやしない。多分、撃たれた時にためらいなく
撃ち返せるのは自分だけだ。それを江草が望むにせよ、望まないにせよ。

116 :542(4/7):05/02/25 23:44:09 ID:dBjXu6iv0
杉山は江草と狩野を交互に見た。座り込んで俯く江草と膝立ちのまま
目を閉じた狩野。恐怖と混乱に浸された二人。
―――比較的戦えそうなのはやっぱり俺だ。少なくともこの中では。
憂鬱な事実を再認識させられて、ぐっと右手に力を込める。そこにあるのは
馴染んだボールの感触でも、バットのグリップの手触りでもない。武器だ。
人を殺すための武器だ。
(違う)
そうじゃない。俺が、俺がこの武器を握っているのは。
(こいつらを守るためやろ?)
詭弁だろうか?
……たとえ詭弁であったとしても、誰かに文句を言われる筋合いはない。
あってたまるものか。こんなろくでもない殺し合いを強要されているのだから。
「大丈夫、やな?」
もう一度、噛んで含めるような口調で確認する。蒼い顔のままではあったが
聞き分け良く肯く二人に、とりあえずは胸を撫で下ろした。
「心配せんとき。お前らの事は、俺が守ったる。な?やから、落ち着いて
 これからどないするか考えよな」
ああ、こんなの俺のガラじゃない。こんな安っぽい正義の味方みたいな台詞。
でも仕方ない。二人ともこんな状態だし。
杉山はゆっくりと立ち上がった。縋るような目で見てくる江草に、ちょっと
座っとって、と言い捨てて前川の傍らに膝をつき、倒れた彼の肩に掛かった
血染めのバッグを取り上げ、覚悟を決めてその遺体をじっと観察しだした。
込み上げるものはじっと押し殺した。押し寄せる苦痛や悲しさに穿たれてでも、
生き残るための情報が欲しかった。
背中にひしひしと感じる二人の視線。それはそのまま二人分の命の重さだ。
簡単な検分を終えて振り返った時、二人とも指一本動かしてはいなかった。
「江草、立てるか」
手を貸してやると彼は存外力強く手を握り返してくる。その目に涙はもう
浮かんでいなかった。……悲しい色はどうしても消えなかったけれど。
その淡い澱みにまた一つ、胸の奥が痛くなるのを感じた。

117 :542(5/7):05/02/25 23:44:41 ID:dBjXu6iv0
狩野の隣に江草を座らせ、自分も腰を下ろす。そして二人が自分の方を
見ている事を確かめてからこう切り出した。
「あのな。俺は、この家はもう出た方がええと思う」
「……どうして、ですか?」
「前川さんや。前川さんは多分、ここより離れた場所から来た筈や」
島の地図を広げて現在位置をペン尻で叩き、周囲をぐるっと囲むような
ゼスチュア。その確信のこもった言葉に江草が怪訝な顔をする。
「何でそんな事が解んの?」
「あの傷……多分、あれは銃で撃たれたんやと思う。胸より背中の方が
 傷が大きかったし、あんな酷い傷つけるには刃物とかやと無理やんか」
とんとん、と胸の辺りを示し、せやろ?と江草に同意を求めると、さっきは
そんなところまで観察してたのか、と顔に書いて見せてくる。
「やのに、さっきから銃声とかが全然聞こえへん。まぁサイレンサーっていう
 可能性もあるけどな。で、そこの窓から見える範囲でも、向こうから
 ずうっと、この家まで血の跡が続いてる。でも、誰も―――前川さんを
 撃った奴が追っかけてくる気配があらへん」
「途中で見失ったとか?」
「それか、撃った相手も重傷で追って来られへんのかも知らんけど。でも
 前川さんの武器は多分これやで?」
差し出した右手のひらには小さな十徳ナイフ。血痕も脂の曇りもない。
「撃った奴は無事やけど、何かの理由で追っかけて来れへんかったか、
 敢えて深入りせんかったん違うかな」
「それで?」
「つまり―――この家からかなり遠くまで、あの血の跡が続いてる」
「……そっか!」
言わんとしているところを二人は漸く理解したらしい。

118 :542(6/7):05/02/25 23:45:05 ID:dBjXu6iv0
「その跡を、他の、誰かに見られたら」
「やる気になってる人だったら、ここに向かってくるかも知れない……?」
「ビンゴ」
人差し指をぴっと江草の顔に突きつけ、杉山。
「これ以上ここにおんのは危険や。人がおるっていう看板掲げてるような
 もんやし、俺は違うトコに隠れた方がええと思う。ここからもう少し離れた
 ……せやな、H-3とか、この辺りがええんとちゃうかな。禁止エリアに
 ちょっと近いから、人が寄りつかんと思うし。あんまし遠くまで行くんも
 危ないかも知れへん。―――とにかく、動くんなら早よした方がええ」
解るな?と杉山が二人の目を見る。焦燥を帯びた真剣な眼差しに、
どちらの咽喉は解らなかったが嚥下する音が大きく響いた。
「……裏の勝手口から出よう」
江草の提案に二人が頷く。
誰ともなく立ち上がり、荷物を集め始めた。微かに漂う血の臭いが否が応にも
三人を急かし、ひたすら無言のうちに六本の手が動く。
最後に部屋を出る間際、杉山はついと振り返った。
視線の先には前川の遺体がある。眠るように―――きっと眠かったんだろう。
眠くて、疲れきっていたに違いない―――軽く目を閉じたその顔が、倒れた
形のままこちらを向いている。
何故か、彼から視線を外すことができなかった。
(どうしてこんな事になったんやろ)
あの姿は、自分たちがそうなっていたのかも知れないという一つのだ。 
認めたくもない、受け入れたくもない、だが事実そのものだ。
だから目に焼き付けておこうと思った。
自分は躊躇してはならない。少しでも迷えば、自分だけではなく江草と
狩野までもが前川のように無残に殺されてしまうかも知れない。迷わない為に、
自分を『殺す』為に、杉山はその赤にひたりと視線を当てた。網膜を灼く
緋色の痛さを憶えておこうと思った。
自分より些か優しい気性らしいこの二人を守ってやるのだと、決心していた。

119 :542(7/7):05/02/25 23:45:34 ID:dBjXu6iv0
「……行こう」
静かに自分の様子を見守っていた二人がこくりと頷く。
二人とも自分なりに飲み込んだようだ。それでいい。今はそれで十分だ。
そう思いながら、杉山は低く低く、そっと一つ言葉をつむぐ。
「死ぬもんか」
それは口の中での小さな呟きだったけれど、江草には聞こえたようだった。
ぴくりと動いた目元がそう言っている。その目元が少し翳りを含んだ色を
刷いたのを、痛いと訴えかけているのを、杉山は見ない振りをした。
自分だって痛い。あちこちが軋むように痛い。
それでも、武器を持つ自分はそんな泣き言など言ってはいられないのだ。
それを口にしてしまったら『魔法』は解けてしまう。この器用で小利口な、
計算高くて合理主義の右腕が、主の命令に従わなくなってしまう。
そうなってしまったら、その先に待つのは言うまでもなく。
「絶対、生きて帰ろな」
「……うん」
「絶対やで。絶対、また野球するんやから」
「うん」
「狩野も野球したいやろ?死にたないやろ?」
「はい……」
そう、生きて帰るんだ。生きて帰って野球をするんだ。
銃を握る手が熱い。
頭の奥が、とても熱い。
ちりちりと炙られるような疼痛が走る。それは足の裏から頭の先までを
貫くようにして、身体の芯を走り抜けて去った。
その感情の名は、。
「生きて、帰ろな」

【残り38人】

120 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/25 23:58:26 ID:iq+EYc440
立て続けに新作が来てる!
皆さん、本当に乙です!

121 :542:05/02/26 01:56:26 ID:33nShxMh0
すみません、脱字訂正です。
>>118の上から22行目、『一つの』の後に『暗示』という語句を補って読んで下さい。

122 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/26 14:58:00 ID:ROd2S/Kz0
職人さん方、GJ!

123 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/26 20:48:54 ID:zbd4Tok6O
山本省、近藤、野村、吉川、萩原、松村、町、
このうちの誰かと前川トレードしないかなぁ

124 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/26 20:58:36 ID:xZ3wJRSp0
ゴバーク??

125 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/27 00:37:48 ID:nmCP1v4M0
リレー、いろいろと動きがあったんですね
杉山江草狩野は無事に移動できるのだろうか…ドキドキ
久慈さんにはホッとさせられました
けど小宮山あああああ!!

328氏も乙です!
いつもながら笑わせていただきました
どんでん怖い…

126 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/27 02:52:30 ID:n9DUONWS0
江草杉山狩野の続き待ってました

127 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/27 15:14:00 ID:Y7WPjspu0
ほしゅ

128 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/27 17:39:38 ID:19BGvZUz0
こうやって読んでみると、生き残って欲しいと思う奴がたくさんいるな…
でも、ダメなんだよなー



129 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 03:18:18 ID:iJhGr0le0
今年は前川とクビアンがまず自由契約

130 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 17:55:43 ID:xLzj3M0m0
保守

131 :(1/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/02/28 20:38:14 ID:gbse+eeN0

19.iPodのある風景

状況に即した素晴らしい選曲だと感心すべきかどうなのか。
福原忍は手にしたiPod miniのクリックホイールの上に親指を滑らしながら、聞こえてく
る旋律に意識を集中しようとしていた。渡された荷物の中からファンブック付きのこれが
出てきたときは、やはり一連の事象は冗談だったのでないかと疑わずにはいられなかった
が、さりとて自分の置かれている状況が変わるわけでもない。できることといえば開き直
ることぐらいだ。

白っぽくなったコンクリート壁に背を預け、福原は瞑目して荘厳な調べに身を任せた。
孤島で音楽鑑賞とはいい身分じゃないか。入っているのがいわゆる三大レクイエムだけと
いうのは微妙なところだが、CMで聞いた映画『バトルロワイアル』のテーマがVerdiの
Messa da Requiemの一部だというのは分かった。だから何だと言われればそれまでだが。

福原は勤めてゆっくりと呼吸をした。落ち着いてクラシックに親しむには環境が整ってい
るとは言いがたい。背凭れは硬くて垂直に過ぎ、付属のヘッドホンは洒落てはいるが性能
はいまひとつだ。腰を降ろしているコンクリ片がどうにも不安定でぐらぐらするのも良く
ない。それに――。

今、妙な音が聞こえなかったか?


132 :(2/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/02/28 20:39:55 ID:gbse+eeN0

福原はヘッドホンを外して、身を潜めている一室の窓に駆け寄った。
音は機械の唸りのように思えた。それほど遠くない。具体的な発生源は何だろうかと考え、
エンジン式の草刈機を連想した途端、音は止んだ。
福原は油断なく視線を走らせながら、周囲を伺う。分かる限りの範囲に何者の姿も気配も
ないことを確認して、彼はそっと安堵の息をついた。
と、その安堵をあざ笑うかのように再び機械音がする。福原はつきかけた息を飲み込み、
身を硬くしたが、音はまたすぐに途絶えてしまった。

音の発生源で、何が起きたのだろう?
状況を考えれば、それが不吉なものでない可能性は低いと、福原は思った。
彼は重い足取りで窓から離れ、椅子代わりにしていたコンクリートの固まりの上に再び腰
を降ろした。外していたヘッドホンをもう一度耳にかける。しかし格好だけだ。音楽を聴
いている振りをしていても、過敏になった神経はそれ以外の音ばかり拾ってしまう。
「勘弁してくれよ…」
福原は小さく呟き、頭を抱えた。ヘッドホンから、か細く鎮魂の歌が流れている。
男声パートを追いかけ、澄んだソプラノが歌う。Salva me、私をも救い給え、と。
Angela Gheorghiuの美声を以ってしても、みいつの大王の救いの腕は福原に届くものでは
なかった。ヘッドホンから聞き覚えのある声が迸る。福原は思わず顔を歪めた。
「おい、聞こえとるか?俺や。岡田や」

[福原忍:iPod mini]

【残り44人】

133 :49 ◆NRuBx8130A :05/02/28 20:41:28 ID:gbse+eeN0
すいません>62の続きですorz

134 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 21:41:31 ID:RBJ+l6AR0
新作乙

135 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 23:50:34 ID:z6rku+Hl0
乙です!
おはぎ来たー!

136 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/01 23:39:32 ID:/6mxS/qH0
939さんのリスト、最近更新されてないっすね
あの的確なまとめはいつも楽しみなんですが

137 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/01 23:41:58 ID:34GUDHAG0
まあ忙しいかマンドクセなんだと思うが、
スレ無し状態が長く続いたから気付いてないってのもあるかもな。

138 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/02 15:46:13 ID:XPkpnXRE0
>>136
更新されてました。939氏、乙です!

139 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/02 22:18:49 ID:glfiWtdI0
おお、リスト更新来てたんだ
いつも乙です

140 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/03 04:41:15 ID:uWQFp/3v0
皆さん乙です。
久慈さん萌え。

141 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/04 00:02:32 ID:8kYE6wZK0
リレーで前川が杉山たちに発見された時間っていつ頃なんだろう?
939さんの表だと章順どおり最新の事項(15時以降?)になってるけど
自分は22章の最後で聞こえてきたごとん、という音が
41章の最初につながっているのかと思った(11時過ぎ)

142 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/04 20:44:14 ID:KIMxkPYQ0
職人さんたち乙!!

143 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/04 21:19:00 ID:/BJGAA5P0
>141
22章は41章へ繋がってる感じだし、その解釈で正しそうだ。
時刻は文章から推測するしかないから、まとめる人も大変なんだろう。

144 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/05 06:43:16 ID:9/fFiM2N0
おはぎ、クラシックファンなのか。しぶいな。

145 :(1/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/03/05 16:52:35 ID:RIfSNI5F0
>132より

20.リング・ワンデリング

安藤優也は疲労していた。
足が重い。いくら鍛えているプロ野球選手だからといって、階段と坂ばかりの行程を休み
無く歩き回れば疲れるのも仕方ないだろう。30分もあれば一周できてしまう規模のこの島
を、様々にルートを変えながら延々と移動し続けている。
あれから銃声や悲鳴、よく分からない不審な駆動音等を何度も聞いた。いつ襲われるかと
神経を尖らせたままの強行軍である。知らぬうちに体が鉛の重さを帯び始める。
安藤は歩きながら身を屈め、痛むふくらはぎを軽く叩いた。
先を行く背中を睨む。21の数字を背負った男は、後続のスピードダウンに気付く様子もな
く、変わらぬ歩調で歩き続けている。距離を広げるまいと、安藤は少し早足になった。
見失ってはいけない。苦楽を分かち合った戦友を放っておけるわけがない。
――たとえ彼がどんな状態であろうとも。


使命感にも似たものに駆られ、危険を承知で待っていたのだ。自分に続く背番号の者――
杉山、筒井、金澤が、あたりを警戒しながら早々に走り去っていったのは、たぶん、幸運
だった。投手仲間に後輩たちだから、顔を合わせたとしても攻撃されることはないと楽観
的に踏んでいたのも嘘ではないが。

146 :(2/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/03/05 16:55:29 ID:RIfSNI5F0

長すぎる20分が過ぎ、待ち人は姿を現した。安藤は身を隠していた物陰から這い出し、彼
の視界に入るように素早く、かつ用心深く移動した。
吉野の顔はこちらを向いていたから、安藤は小さく手を上げて名を呼んだ。声は抑え気味
であったが、届いていたはずだった。
しかし吉野は彼には構わず、くるりと背を向けた。何か気になることでもあったのかと思
い、安藤は慌てたが、駆け寄る親友に一瞥もくれず、吉野はそのまま歩き出してしまう。
「吉野!」
思わず出た自分の大声に、安藤はギョッとして周囲を伺った。動くものはない。まるでか
つての島民であるかのように、地図も見ずにすたすたと歩を進める吉野以外は。


「なあ、」
安藤は声を絞り出すようにして、先を行く背中に声を掛けた。
返事はない。振り返りもしない。もう何度目だろう?
ため息をつき、安藤は歩き続ける吉野を追う。さらに足を速め、追い越すようにしてその
顔を覗き込んだ。相変わらずの無表情だ。頬の傷からはまだ血液が、血漿の比率を大きく
しながらも染み出し、顎から首を伝い、アンダーシャツに吸い込まれている。
「吉野、」
再び呼びかけてみた。やはり反応はない。
元には戻らないのだろうか。安藤は唇を噛み締め、歩くことに集中した。
頭は上手く回らなかった。

【残り44人】

147 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/05 22:58:49 ID:lbaTHhxW0
>145-146
乙です。吉野…壊れた??

148 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/06 00:05:33 ID:DvQabAMD0
職人さん乙です!
まだ出てきてない選手達が気になる・・・

149 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/06 02:24:34 ID:vnXukFUE0
吉野・・・

150 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:02:32 ID:dBDqzv830
――その者は、圧倒的な強さだった。
野口とて、決して無抵抗だったわけではない。だが一瞬で勝負はついた。
薄れゆく意識の中で、ふと野口の脳裏を掠めたものがあった。

――まがりなりにも、いままで戦えてこれたのは、守るものがあったからだと思う。

例えば、鳥谷だったりウィリアムスだったり、藪や矢野だったり。
自分が無鉄砲に、強敵に立ち向かったときはいつも、後ろに守るべきものがいた。
守らなきゃならない相手が、自分の後ろにいたからこそ野口は今まで戦ってきた。
だが、今回ばかりは違う。
自分の後ろに、守らなければならない相手はいない。

いま自分がここで、割に合わない強敵と戦う理由はない筈。
ならば、なぜ戦おうとした――?
戦わず、逃げ出せば良かった。
それが適わぬなら、さっさと殺されてしまえばいい。
それでも問題はないだろう。守るべきものは居ないのだから。
いまここで殺されても、何の問題もあるまい……。

その時、ふと友の言葉が浮かんだ。

151 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:03:10 ID:dBDqzv830
若き岡田に頭をつかまれ、やがて野口の足は地から離れた。
頭と言わず、肩と言わず、体中のあらゆる箇所からは血が流れ、両の腕はだらんと垂れ下がっていた。
「違う……」
そんな中、もう痛みさえも感じない野口は不意にぽつりと口走った。
自分の頭を掴み続けるその太い腕に、手を伸ばす。
『なんや…まだ、生きとるんか……』
若き岡田は、自分の腕を掴む野口を見てすこしだけ驚いた様子を見せた。
だがそれだけだ。いまの野口にはそれ以上の抵抗は出来ない。
そして野口は、かすれた声で、言葉にならない声を発する。
「守るべきものなら…いる……」

それは鳥谷ではない。ウィリアムスでもない。藪でも、矢野でもない。
では狩野恵輔か? いいや、それも違う。

――いいか野口。無茶をするなとは言わんが、命だけは大事にしろよ。自分の身体くらいは、守ってやれよ…――
脳裏をよぎる、藪の言葉。
あの不器用な男にここまで言わせたんだ。
その約束を、守らないわけにはいくまい。

(そうだった…。オレが守らなければならないものは…他でもない、オレ自身だ…!)

オレはばかだ。
そんな大事なことを忘れていたなんて…。
自分すら守れない人間が、誰かを救おうなんて笑わせる。
オレは死なない。やられもしない。決して逃げない。
「お前を、斃す――!!」
『なっ……』
唐突に、虚ろだった瞳に闘志が宿った。
それを見た若き岡田は思わず怯み、力をゆるめた。

152 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:04:41 ID:dBDqzv830
野口は迷わず若き岡田の腕を払いのけ、地に両足をつけた。
「うおおおおおっ!!!」
そして、渾身の力を籠めた拳を、若き岡田の顔面に叩きこんだ。
『うぐぅっ…!』
思いっきり殴った反動と、殴られた反動で、双方ともにたたらを踏むが、野口はすぐに体勢を立て直した。

「オレはばかだから、未だに何の覚悟も出来ちゃいない…」
尻もちをついた状態のまま、頬をおさえながら睨みつける若き岡田に向かって、野口はゆっくりと語りだした。
「だけど、そんなのは当たり前だ。仲間同士で殺し合いなんてそれこそ馬鹿げてる」
『……………』
「仲間は殺さない。…だが、お前のような化け物を野放しにしておくわけにはいかん! いまここで倒す!」
拳を堅く握り締めると、野口は若き岡田に向かって突進した。
(藪、矢野…約束だ。オレは絶対に自分からは倒れない。だから、オレに力を貸してくれ…!)

『ほざくな! そんな身体で何が出来るんや!』
若き岡田は野口の拳を軽くかわすと、丸太のような腕で立て続けに野口を殴った。
「ぐぁっ……」
野口は数歩よろめく。
『ふん、ド三一がでしゃばるからこうなるんよ』
「っああああ!!」
だがすぐに踏みとどまると、再び岡田に突進した。
『なんや、まだ立っていられるんか…!』
「ッせい!!」
『…くっ!』
半ば苛立ち混じりに、若き岡田は野口を突き飛ばした。
だが野口は倒れない。
正面から若き岡田をにらみつけた。
『なんやこいつ…バケモンか…!?』
「お前に言われる筋合いはない!」
『うぐ〜〜〜〜〜!!』
若き岡田は眉間にしわをよせ、悔しそうに歯噛みした。

153 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:07:38 ID:dBDqzv830
ぺっ!
折れてしまった奥歯と一緒に、血の混じった唾を吐き捨てる。
(まともにぶつかったら、やはりオレの分が悪いか…。どうすればいい…?)

『…くっ!』
若き岡田は、罵りながら短刀を取り出した。
「……!?」
『しぶとく刃向かうお前が悪いんよ。すぐ殺したるわ』
(…………!)
刃物くらいで怯むわけにはいかない。
野口は腰を落として身構えた。
見紛うほどの疾さで岡田が突っ込んでくる。
『これで終わりよ!』
「――!」
短刀を握る岡田の右手を薙ぎ払う。
「…せいッ!!」
そして、勢いを殺さぬまま岡田を空中に放り投げた。
『な、なんやっ!?』
唐突に反転したセカイに反応できず、岡田はそのまま後頭部を強打した。

「はぁ、はぁ……」
一気に緊張の糸が途切れた野口は、無意識のうちにその場に膝をついた。
(大丈夫だ、オレは負けちゃいない…)
野口はそのまま、うつぶせになって倒れた。


(不覚…)
これまでたくさんの選手を始末してきたが、敗北はおろか苦戦すらしなかった。
この野口という男と、他の選手。何が違うのかは分からないが、認めざるを得ないだろう。


154 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:11:17 ID:dBDqzv830
ゆっくりと、若き岡田は起き上がった。
視線の先には、倒れたままの野口がいる。
『ぐふふ…さすがにもう限界か…。ま、そらそうやわな』
「ふふ、そう言うお前は…さすがにタフだな…」
野口は驚いた様子は見せずにそう言った。おかしなことに笑いが込み上げてきた。
『もう反撃しないんか?』
「さぁ、どうだろうな…」
野口は最後の力を振り絞り、上体だけなんとか起こした。
『今度こそ本当に終わりよ。どんな気分や?』
「どうかな。オレはもう動けないが、全くと言っていいほど死ぬ気がしない」
『お前の都合なんて聞いとらんわっ』
岡田は無防備な野口を、思い切り蹴り上げる。
『ふん、生意気なツラや。お前は死ぬんよ。そやのに何でそんなツラなんや!』
「言っただろう…。オレは死にやしないよ」

『ええい、喋るんやない。お前の言葉は耳障りや!』
「………!」
岡田は、握った短刀を野口めがけて振り下ろす。
その瞬間――

「ニャァ〜〜〜」

岡田と野口の中間を、小さな猫が横切った。
『な――っ!?』


「双方、そこまでだよ」

第三者のその言葉と同時に、大きな爆発が起こった。

155 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:14:28 ID:dBDqzv830
ども。


今回は>>107-111の続きです。


156 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/07 21:53:14 ID:Ej86abAG0
>>155
乙です。続きが気になりますなあ…

157 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/09 19:10:38 ID:Sp6bBDq40
ソフトバンクのイメージ
http://sports7.2ch.net/test/read.cgi/npb/1110345400/


158 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/11 04:56:13 ID:210YGiAP0


159 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/11 15:49:45 ID:8fRa3aFX0
しゅ

160 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/12 00:56:22 ID:7sI4AipeO


161 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/12 17:34:32 ID:2P3evZcw0


投下待ち捕手

162 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/12 23:24:17 ID:IDWT4zBs0
なにげに好きなキャラはリレーでは金本&藤本。

163 :542(1/4):05/03/13 23:03:31 ID:vE7FUOfW0
>>119

42.人間性の虐殺

ひとしきり、嘔吐した。
頭に鉛の弾でもぶち込まれたような感覚だった。身体中を悪寒が駆け巡り、
末端にまでそれが充満している。太陽は地べたに四つん這いになったまま
嘔吐を繰り返した。身体を震わせた瞬間に振動が脳髄に伝わり、またえずく。
「かは、っ……ぁ゙、が……」
殆ど食物の入っていない胃が痙攣し、僅かばかりのどろりとした物体と刺激臭を
放つ液体を逆流させた。胃酸が咽喉を焼き、その感触がまた吐き気を誘発する。
苦しくて苦しくて、まなじりに冷たいものが溜まる。悪循環だった。
「ゲホッ、げ、ぇ……っ……」
胸を掻きむしっても震えは止まらない。
瞬きひとつ、息のひと吸いがままならない。だらんと下がった頭に血が集まり、
眼の奥で光がチカチカ点滅するのと同時に視野が狭窄している事を認識する。
脳味噌をミキサーでぐちゃぐちゃにかき回されるような眩暈と不快感の中で、
ぼんやり残った網膜のスクリーンに映る自分の手が他人のもののように見えた。
指の長い、大きくて器用な右手。自慢の右手。
泥と砂に汚れた右手。
つい最近まで商売道具だった、大事な大事な右手。
「は、はは……」
爪の間には赤黒く変色した血がこびりついている。
太陽は力なく笑った。自嘲の笑みだった。這いつくばったまま手のひらに力を
加えると、長くて節のある伸びやかな指がぐぐっと土をえぐり、短く切られた爪が
地面に5本の線を描く。何度も何度も、無心にそれを繰り返した。指先が痺れて
じんじんと痛むまで、両手を支える地面の周りが掘り返された柔らかな土で
こんもりと盛り上がるまで―――
しかしそうやって苛めてみても、爪の先には未だ薄っすらとほの朱い色が、
薄っすらとほの緋い感触が、残滓のようにぬらぬらと纏わりついている。

164 :542(2/4):05/03/13 23:04:27 ID:vE7FUOfW0
そうだ、コレは血だ。
人間の血液だ。
俺が殺した。
―――さっき俺が殺してしまった、大介の血だ……

殺した時は、。
そんなに―――いや、『そんなに』と言うとかなり大きな語弊があるけれども、
とにかくそれほど大きなショックは感じなかった。
人を殺めた事それ自体に対する衝撃は小さかった。
その時点においては、自分が殺人者になったというのは単なる事実確認に
過ぎなかったのだ。自分は、他人を犠牲にしてでも生き残ろうとする、それが
出来る人間であるという事実確認。単純で些か乱暴だけれど、このトチ狂った
世界の中では大変に重要な意味を持つ事実だ。この際真実と事実の相違に
ついては置くとしよう。議論する意味がない。ここには殺す人間と殺される人間、
それだけしかいないからだ。究極的に突き詰めていくと、この島に放たれた
獰猛で哀れな猛獣たち―――これは自分たちの事に他ならない―――の
分類はその二つだけ。
喰うか喰われるか。
カテゴライズはそれだけだ。
太陽はそう自分に言い聞かせた。血に染まった、命の次くらいに大事にしていた
自分の右手を見つめながら、口の中で呪文のように繰り返した。
だって、アリアスは中村を殺していたじゃないか。
尋常じゃない目の色をして、死んだ中村をずるずる、ずるずる、まるで大きな
ずた袋のように引きずっていたじゃないか。
自分が殺さなくったって、誰かが殺す。いつか殺す。殺す。殺される。
なら、自分が誰かを殺しても仕方がないんじゃないか?

165 :542(3/4):05/03/13 23:07:18 ID:vE7FUOfW0
―――あまりにあっさりと人を殺してしまえて、太陽は拍子抜けしていた。
(なんだ、簡単じゃないか)
簡単だった。
適当に見つけた萱島の後を尾けて、気付かれたらちょっと喋って仕草で煽って、
向かって来たのを最終的に体格差で捻じ伏せ、殺した。
あまりに簡単すぎて、あまりにスムーズすぎて。
ネジの飛んだ頭。メーターの振り切れた脳。薄らいでゆく倫理観。
リアルさが致命的に欠落した感覚に支配されるまま、身体は動いた。
武器の処理も、荷物の収奪も。冷酷な捨て台詞までもが滑らかに口をついて、
太陽は少しだけ複雑な気分だった。
アリアスもこんな気持ちだったのだろうか。
殺人を終えて彼が安堵していたのか、動揺していたのか。それは解らないけれど。
情けない顔をして悲鳴を上げた俺の事を、どんな目で見ていたんだろう?
「簡単、だったな」
呟く。確認する。『作業』が本当に作業であった事を自分の頭に刷り込む。
暫く経てば頭が冷えて、周りの景色が目に入るようになった。殺人現場から
離れるにつれ、血臭漂う神経の昂ぶりもすっかり治まる。静かな森の中に身を
隠しているうちに、トリップしていた脳が現実に引き戻される。冷静になる。
―――そしてそこで突然、酷い眩暈に襲われた。
(殺したんだ)
事実だった。自分が選び、自分が実行した事実。だのに、何だか理不尽な
論理展開をしているような気がする。腑に落ちない。
騙し討ちをされたような気分。
「殺した」
呟くと、その言葉が自分の両肩に重く圧し掛かってくるような錯覚を覚える。
「俺が、殺した」
もう一度呟いた。その途端、ベルトに挿したアイスピックと手にした包丁が
ずんと質量を増したような、そんな感覚が身体を包んだ。
包丁には自分の血が、アイスピックには彼の血が。
殺した。
認識した次の瞬間、太陽は嘔吐していた。

166 :542(4/4):05/03/13 23:09:07 ID:vE7FUOfW0
―――ひとしきり嘔吐した。
内臓が口から飛び出るんじゃないかと思うくらいの苦しさにのた打ち回った後、
汚物でべとついた唇を手の甲で拭った。ぬるぬるとした感触がまた気味悪くて
汚れた手を地面に擦り付ける。乾いた泥がくっつき、汚れを浚い、さらさらとした
埃っぽい手触りを与えてくれる。懐かしい土の温もり。
口をつけないようにしてペットボトルの水を唇に注いだ。何度も口をすすぎ、
何度も吐き出した。清涼感が心地よくて、酷く痛かった。
……痛かったのだ。
痛くて痛くて堪らなかった。
自分は仲間を殺してしまった。もうこの先、それ以外の道は進めないのだ。
喰われる側に回りたくなければ喰らうしかない。他人の命を喰らい続けて、
生き延びるしかない。(でも、そんな俺に生きる価値があるのか?)
自分は死ぬのだ。(嫌だ、死にたくない)
今までの自分は死に、人の血を啜って生きる『自分』だけが残る。(やめろ)
そう、ただそれだけの話。(―――本当に、それだけ?)


圧倒的な恐怖と、ズタズタに凌辱し尽くされた自分自身と。
喪ったものの大きさに、太陽はぐったりと四肢を投げ出したまま、少しだけ泣いた。

【残り38人】

167 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 00:00:44 ID:GAP23IQM0
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
職人さん乙です!

168 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 01:40:21 ID:Q5q02Hhm0
包丁よりアイスピックの方が強かったのか。。。太陽、泣くなぁ。

169 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 12:29:58 ID:ljQx1LOT0
太陽(´Д⊂ヽ

170 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 20:50:19 ID:JElML4im0
1/4が表示されてなくて焦った…NGワード入ってたらしい
ともあれ、職人さん乙

171 :515(1/4):05/03/15 18:14:30 ID:urzXhqRX0
>>163

43.使者

大鍋から茶碗で温をすくい、頭に被る。
水の流れる音、水の跳ねる音―――ふと、静けさが気になった。
音が気になることはあっても音のないのが気になることはあまりない。
耳の奥から糸でも出ていて、それをピンと引っ張られているような感触
がある。鼓膜が緊張している。
頭を振ると水滴が飛び散り、畳に着地してぱたぱたと音を立てた。辺り
は水浸しで、その水を吸った部分だけがやけに黒ずんでいる。それが
畳が古いせいか、水に流されたもののせいかは知らない。
今岡誠は汚れのなくなった手の平を確かめ、それを耳に当てた。そう
すると遮られるはずの音が今はないから、当てても当てなくても変わり
がない。ただ少し、冷えたものがぬくまるような、張り詰めたものが緩む
ような感覚はした。一体自分の何がそんな変化を起こしたのかわから
ないが。
鏡を見るのは気が向かないので、手で濡れ髪に触れる。頭も顔もすっ
かり綺麗になったようだ。冷たい水を被るのが嫌だという理由だけで湯
を沸かしたのだが、それが正解だったのだろう。
しかしさすがの温水も服の汚れまではどうしようもない。今岡は脱いだ
ユニフォームとアンダーシャツをそのままに置いて隣室へ向かった。
窓。日に焼けたくすんだ色合いのカーテン。ところどころが破れている
押入れの襖。安っぽい白のタンス。六畳ほどの和室は薄暗く、全体的
に煤けて見える。
タンスの前にしゃがむと最上段の引出しがちょうど目の高さにあった。
そこには見栄えも何も考慮しない無邪気さでたくさんのシールが貼ら
れており、ドラえもんやアンパンマン、ピカチュウ、しまじろうなどが愛想
のいい笑顔をこちらに向けていた。
―――ああ。
息子は今頃どうしているだろう。

172 :515(2/4):05/03/15 18:14:52 ID:urzXhqRX0
期待せず開けた引出しには、予想に反して大量の衣服が詰め込まれ
ていた。中から黒のニットを選び出し袖を通す。肩の幅と袖の長さが
わずかに足りない上、樟脳の強い匂いが鼻腔を占領し胸を圧迫した。
居間に戻る。濡れていない所に座る。赤いユニフォームと黒いアンダー
シャツを畳む。卓袱台の下に避難させていたデイパックへしまう。もう
一つのデイパックも引き寄せる。引き摺られたデイパックが畳に赤い
尾をひく。顔を上げる。野口寿浩がいる。
『死ぬってどういうことなんだろう』
もう知っているくせにまた同じことを聞いてくる。何度も聞いてくる。
はじめは何と答えたのだったか―――今岡は考える。生きていないと
いうことだ、と答えたか。思い付きのくだらない言葉遊びだ。愚問愚答
とはこのことだろう。そう、愚問だ。
死に説明は不要である。そもそもが説明できるものでない。
死の当事者にとっての死とは無でしかないからだ。脳の機能が停止
するのだから何も見えないし何も聞こえず、何も感じない。何も思わ
ない。何も考えない。それは無だ。無の概念さえもない、全くの無だ。
だから、死について益体もない考えを巡らせるのはいつだって生きて
いる者だけだ。
だから、
『死ぬってどういうことなんだろう』
―――これは俺の声か?
死の経験者は存在しない。今目の前にあるのは物を考え言葉を繰る
人ではなく、人の形をしたただの肉だ。今この瞬間も少しずつ腐敗して
いる肉だ。何も教えてはくれない。
あの高揚感はどこへ消えたのだろう―――。
唐突にそう思った。
体中を駆け巡り熱を上げ、目に映る世界の全てを輝かせたあの興奮は
一体どこへ消えてしまったのか、と。
この胸のどこかを削り取り、どこへ持ち去ったのか―――。

173 :515(3/4):05/03/15 18:18:35 ID:urzXhqRX0
欲求を満たす、その代償は大きい。それは昨夜も感じたことだった。
後悔があるのではない。ただひどく虚しくなる。空虚の密度の濃さに
辟易する。
衝動が矢のように胸を貫き、風穴を開けて去る。その穴を埋める術を
今岡は持たない。襲い掛かる衝動を防ぐ盾もない。
ただ流されているだけかと思う。それでいいのだ、そういうものだとも
思う。
しかし考えずにはいられない。今目の前に横たわる死のことを。
そうして思いを巡らせると胸の風穴が広がるのだ。
隙間がある。そこへ何かが侵入してくる。さらに大きく抉じ開けられた
そこにまた何かが入り込み、また穴を広げる。その繰り返しが、いつか
この心を消すような気がした。大きくなり過ぎた穴が主体になる。その
穴こそが新たな心になる。
これは―――何だろう。
自分が自分でなくなる。(『自分』とはこの肉体か、この意識か。肉体
が物理的に何者かに変容することはあり得ない。なら意識か? いや、
意識と肉体は不可分だ。ならばこの肉体がある限りは、『自分が自分
でなくなる』などというのは愚かに過ぎる戯言だ)
自分が何かに乗っ取られる。(馬鹿を言うな)
自分が自分でなくなる。(違う。違う)
「それでも生きてるって言うんかな」
生とは何だ。死を抜きにして生を考えられない。生と死は不可分だ。
では死とは何だ。生を抜きに死を考えられない。不可分。
死を『終わり』と考えた時、生は死へ向かう過程としかならないと思う。
ならば生は死のためにあると言えないか。
ならば人は死ぬために生まれるのか。死ぬために生きるのか?
―――それは……そんなのは
嫌だ。
「野口さん」
応えぬ死者に語りかけるのは馬鹿馬鹿しい。
「……野口さんは」
―――ずるい。

174 :515(4/4):05/03/15 18:18:56 ID:urzXhqRX0
死は在る。死は無、無は無い―――存在しないのに、今目の前に在る。
生者にとって死は存在するものなのだ。今ここに、死と生が在る。
何だ、これは。何なんだ。この苦しみは、何だ。

昔は死を『ケガレ』として忌み嫌ったそうだ。今ならその訳を理解できる。
死者は死の存在を伝えてくる。ただそこに横たわり、物言わず、それでも
伝えてくる。
そうした時、人は死を考えずにいられない。
死がいつでもそばにあることを知らずにいられない。
しかし人は知りたくないのだ。知っているのに、生を受けたその瞬間には
既に知っているのに、知らないフリをしていたいのだ。
そうしなければ―――

誰か自分の話を聞いてくれないだろうか。馬鹿だと笑ってくれないか。
会いたい。誰かに会いたい。誰でも良くはない。なら誰に?
家族に。―――会えない
友人に。―――会えない
仲間に。―――またあれが来たらどうする?
生きている者に会いたい。生を知る者に。言葉を持つ者に。
今岡は一人の男のことを思った。彼とは今までたくさんの話をしてきた。
先輩、友人、仲間。家族のようだとも思ったことがある。彼との関係を何と
呼ぶのが適切かはわからない。ただ、野球の話も、くだらない笑い話も
誰にも話したことのない話も、たくさん話し、たくさん聞いた。
彼なら聞いてくれるはずだ。笑い飛ばしてくれるはずだ。
そしてその場で素早く反論を捻り出し、嘘と真実を絡めてもっともらしく、
面白おかしく話して聞かせてくれる。
それに自分は騙される。納得する。安堵する。そう、それがいい。
会いたい。話がしたい。この、心の話を。この心が消えてなくなる前に。
―――金本さん。
会わなければ。そうしなければ―――

【残り38人】

175 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/15 20:13:51 ID:AQ5AieNe0
新作乙です。

・・・桧山のことかと思った。

176 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/15 21:14:24 ID:BY2zRcwX0
職人さん乙です。

俺も桧山かと思った。そいや金本とは家族ぐるみで付き合いがあるんだっけ。
身勝手ながら続きに禿しく期待…

177 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/15 22:39:51 ID:CcQr+Z3T0
桧山の事だとオモタ人3人目 ノ
多分「先輩」の単語のせいだな

178 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 01:58:07 ID:W/s4BEhs0
もうひとり桧山だと思った奴 ノシ
鉢と仲良いのは知ってるが、
実際そんなに喋ってるのを見た事ないせいか?
桧山はベンチで喋ってるのよく見るからなー

ともあれ職人さん乙です

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