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阪神タイガースバトルロワイアル第4章

1 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/20 21:33:58 ID:MKhzBAxK0
前スレ  http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1102341356/

第一章http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1094306095/
第二章http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1099708704/



129 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 03:18:18 ID:iJhGr0le0
今年は前川とクビアンがまず自由契約

130 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 17:55:43 ID:xLzj3M0m0
保守

131 :(1/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/02/28 20:38:14 ID:gbse+eeN0

19.iPodのある風景

状況に即した素晴らしい選曲だと感心すべきかどうなのか。
福原忍は手にしたiPod miniのクリックホイールの上に親指を滑らしながら、聞こえてく
る旋律に意識を集中しようとしていた。渡された荷物の中からファンブック付きのこれが
出てきたときは、やはり一連の事象は冗談だったのでないかと疑わずにはいられなかった
が、さりとて自分の置かれている状況が変わるわけでもない。できることといえば開き直
ることぐらいだ。

白っぽくなったコンクリート壁に背を預け、福原は瞑目して荘厳な調べに身を任せた。
孤島で音楽鑑賞とはいい身分じゃないか。入っているのがいわゆる三大レクイエムだけと
いうのは微妙なところだが、CMで聞いた映画『バトルロワイアル』のテーマがVerdiの
Messa da Requiemの一部だというのは分かった。だから何だと言われればそれまでだが。

福原は勤めてゆっくりと呼吸をした。落ち着いてクラシックに親しむには環境が整ってい
るとは言いがたい。背凭れは硬くて垂直に過ぎ、付属のヘッドホンは洒落てはいるが性能
はいまひとつだ。腰を降ろしているコンクリ片がどうにも不安定でぐらぐらするのも良く
ない。それに――。

今、妙な音が聞こえなかったか?


132 :(2/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/02/28 20:39:55 ID:gbse+eeN0

福原はヘッドホンを外して、身を潜めている一室の窓に駆け寄った。
音は機械の唸りのように思えた。それほど遠くない。具体的な発生源は何だろうかと考え、
エンジン式の草刈機を連想した途端、音は止んだ。
福原は油断なく視線を走らせながら、周囲を伺う。分かる限りの範囲に何者の姿も気配も
ないことを確認して、彼はそっと安堵の息をついた。
と、その安堵をあざ笑うかのように再び機械音がする。福原はつきかけた息を飲み込み、
身を硬くしたが、音はまたすぐに途絶えてしまった。

音の発生源で、何が起きたのだろう?
状況を考えれば、それが不吉なものでない可能性は低いと、福原は思った。
彼は重い足取りで窓から離れ、椅子代わりにしていたコンクリートの固まりの上に再び腰
を降ろした。外していたヘッドホンをもう一度耳にかける。しかし格好だけだ。音楽を聴
いている振りをしていても、過敏になった神経はそれ以外の音ばかり拾ってしまう。
「勘弁してくれよ…」
福原は小さく呟き、頭を抱えた。ヘッドホンから、か細く鎮魂の歌が流れている。
男声パートを追いかけ、澄んだソプラノが歌う。Salva me、私をも救い給え、と。
Angela Gheorghiuの美声を以ってしても、みいつの大王の救いの腕は福原に届くものでは
なかった。ヘッドホンから聞き覚えのある声が迸る。福原は思わず顔を歪めた。
「おい、聞こえとるか?俺や。岡田や」

[福原忍:iPod mini]

【残り44人】

133 :49 ◆NRuBx8130A :05/02/28 20:41:28 ID:gbse+eeN0
すいません>62の続きですorz

134 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 21:41:31 ID:RBJ+l6AR0
新作乙

135 :代打名無し@実況は実況板で:05/02/28 23:50:34 ID:z6rku+Hl0
乙です!
おはぎ来たー!

136 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/01 23:39:32 ID:/6mxS/qH0
939さんのリスト、最近更新されてないっすね
あの的確なまとめはいつも楽しみなんですが

137 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/01 23:41:58 ID:34GUDHAG0
まあ忙しいかマンドクセなんだと思うが、
スレ無し状態が長く続いたから気付いてないってのもあるかもな。

138 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/02 15:46:13 ID:XPkpnXRE0
>>136
更新されてました。939氏、乙です!

139 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/02 22:18:49 ID:glfiWtdI0
おお、リスト更新来てたんだ
いつも乙です

140 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/03 04:41:15 ID:uWQFp/3v0
皆さん乙です。
久慈さん萌え。

141 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/04 00:02:32 ID:8kYE6wZK0
リレーで前川が杉山たちに発見された時間っていつ頃なんだろう?
939さんの表だと章順どおり最新の事項(15時以降?)になってるけど
自分は22章の最後で聞こえてきたごとん、という音が
41章の最初につながっているのかと思った(11時過ぎ)

142 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/04 20:44:14 ID:KIMxkPYQ0
職人さんたち乙!!

143 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/04 21:19:00 ID:/BJGAA5P0
>141
22章は41章へ繋がってる感じだし、その解釈で正しそうだ。
時刻は文章から推測するしかないから、まとめる人も大変なんだろう。

144 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/05 06:43:16 ID:9/fFiM2N0
おはぎ、クラシックファンなのか。しぶいな。

145 :(1/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/03/05 16:52:35 ID:RIfSNI5F0
>132より

20.リング・ワンデリング

安藤優也は疲労していた。
足が重い。いくら鍛えているプロ野球選手だからといって、階段と坂ばかりの行程を休み
無く歩き回れば疲れるのも仕方ないだろう。30分もあれば一周できてしまう規模のこの島
を、様々にルートを変えながら延々と移動し続けている。
あれから銃声や悲鳴、よく分からない不審な駆動音等を何度も聞いた。いつ襲われるかと
神経を尖らせたままの強行軍である。知らぬうちに体が鉛の重さを帯び始める。
安藤は歩きながら身を屈め、痛むふくらはぎを軽く叩いた。
先を行く背中を睨む。21の数字を背負った男は、後続のスピードダウンに気付く様子もな
く、変わらぬ歩調で歩き続けている。距離を広げるまいと、安藤は少し早足になった。
見失ってはいけない。苦楽を分かち合った戦友を放っておけるわけがない。
――たとえ彼がどんな状態であろうとも。


使命感にも似たものに駆られ、危険を承知で待っていたのだ。自分に続く背番号の者――
杉山、筒井、金澤が、あたりを警戒しながら早々に走り去っていったのは、たぶん、幸運
だった。投手仲間に後輩たちだから、顔を合わせたとしても攻撃されることはないと楽観
的に踏んでいたのも嘘ではないが。

146 :(2/2) 49 ◆NRuBx8130A :05/03/05 16:55:29 ID:RIfSNI5F0

長すぎる20分が過ぎ、待ち人は姿を現した。安藤は身を隠していた物陰から這い出し、彼
の視界に入るように素早く、かつ用心深く移動した。
吉野の顔はこちらを向いていたから、安藤は小さく手を上げて名を呼んだ。声は抑え気味
であったが、届いていたはずだった。
しかし吉野は彼には構わず、くるりと背を向けた。何か気になることでもあったのかと思
い、安藤は慌てたが、駆け寄る親友に一瞥もくれず、吉野はそのまま歩き出してしまう。
「吉野!」
思わず出た自分の大声に、安藤はギョッとして周囲を伺った。動くものはない。まるでか
つての島民であるかのように、地図も見ずにすたすたと歩を進める吉野以外は。


「なあ、」
安藤は声を絞り出すようにして、先を行く背中に声を掛けた。
返事はない。振り返りもしない。もう何度目だろう?
ため息をつき、安藤は歩き続ける吉野を追う。さらに足を速め、追い越すようにしてその
顔を覗き込んだ。相変わらずの無表情だ。頬の傷からはまだ血液が、血漿の比率を大きく
しながらも染み出し、顎から首を伝い、アンダーシャツに吸い込まれている。
「吉野、」
再び呼びかけてみた。やはり反応はない。
元には戻らないのだろうか。安藤は唇を噛み締め、歩くことに集中した。
頭は上手く回らなかった。

【残り44人】

147 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/05 22:58:49 ID:lbaTHhxW0
>145-146
乙です。吉野…壊れた??

148 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/06 00:05:33 ID:DvQabAMD0
職人さん乙です!
まだ出てきてない選手達が気になる・・・

149 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/06 02:24:34 ID:vnXukFUE0
吉野・・・

150 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:02:32 ID:dBDqzv830
――その者は、圧倒的な強さだった。
野口とて、決して無抵抗だったわけではない。だが一瞬で勝負はついた。
薄れゆく意識の中で、ふと野口の脳裏を掠めたものがあった。

――まがりなりにも、いままで戦えてこれたのは、守るものがあったからだと思う。

例えば、鳥谷だったりウィリアムスだったり、藪や矢野だったり。
自分が無鉄砲に、強敵に立ち向かったときはいつも、後ろに守るべきものがいた。
守らなきゃならない相手が、自分の後ろにいたからこそ野口は今まで戦ってきた。
だが、今回ばかりは違う。
自分の後ろに、守らなければならない相手はいない。

いま自分がここで、割に合わない強敵と戦う理由はない筈。
ならば、なぜ戦おうとした――?
戦わず、逃げ出せば良かった。
それが適わぬなら、さっさと殺されてしまえばいい。
それでも問題はないだろう。守るべきものは居ないのだから。
いまここで殺されても、何の問題もあるまい……。

その時、ふと友の言葉が浮かんだ。

151 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:03:10 ID:dBDqzv830
若き岡田に頭をつかまれ、やがて野口の足は地から離れた。
頭と言わず、肩と言わず、体中のあらゆる箇所からは血が流れ、両の腕はだらんと垂れ下がっていた。
「違う……」
そんな中、もう痛みさえも感じない野口は不意にぽつりと口走った。
自分の頭を掴み続けるその太い腕に、手を伸ばす。
『なんや…まだ、生きとるんか……』
若き岡田は、自分の腕を掴む野口を見てすこしだけ驚いた様子を見せた。
だがそれだけだ。いまの野口にはそれ以上の抵抗は出来ない。
そして野口は、かすれた声で、言葉にならない声を発する。
「守るべきものなら…いる……」

それは鳥谷ではない。ウィリアムスでもない。藪でも、矢野でもない。
では狩野恵輔か? いいや、それも違う。

――いいか野口。無茶をするなとは言わんが、命だけは大事にしろよ。自分の身体くらいは、守ってやれよ…――
脳裏をよぎる、藪の言葉。
あの不器用な男にここまで言わせたんだ。
その約束を、守らないわけにはいくまい。

(そうだった…。オレが守らなければならないものは…他でもない、オレ自身だ…!)

オレはばかだ。
そんな大事なことを忘れていたなんて…。
自分すら守れない人間が、誰かを救おうなんて笑わせる。
オレは死なない。やられもしない。決して逃げない。
「お前を、斃す――!!」
『なっ……』
唐突に、虚ろだった瞳に闘志が宿った。
それを見た若き岡田は思わず怯み、力をゆるめた。

152 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:04:41 ID:dBDqzv830
野口は迷わず若き岡田の腕を払いのけ、地に両足をつけた。
「うおおおおおっ!!!」
そして、渾身の力を籠めた拳を、若き岡田の顔面に叩きこんだ。
『うぐぅっ…!』
思いっきり殴った反動と、殴られた反動で、双方ともにたたらを踏むが、野口はすぐに体勢を立て直した。

「オレはばかだから、未だに何の覚悟も出来ちゃいない…」
尻もちをついた状態のまま、頬をおさえながら睨みつける若き岡田に向かって、野口はゆっくりと語りだした。
「だけど、そんなのは当たり前だ。仲間同士で殺し合いなんてそれこそ馬鹿げてる」
『……………』
「仲間は殺さない。…だが、お前のような化け物を野放しにしておくわけにはいかん! いまここで倒す!」
拳を堅く握り締めると、野口は若き岡田に向かって突進した。
(藪、矢野…約束だ。オレは絶対に自分からは倒れない。だから、オレに力を貸してくれ…!)

『ほざくな! そんな身体で何が出来るんや!』
若き岡田は野口の拳を軽くかわすと、丸太のような腕で立て続けに野口を殴った。
「ぐぁっ……」
野口は数歩よろめく。
『ふん、ド三一がでしゃばるからこうなるんよ』
「っああああ!!」
だがすぐに踏みとどまると、再び岡田に突進した。
『なんや、まだ立っていられるんか…!』
「ッせい!!」
『…くっ!』
半ば苛立ち混じりに、若き岡田は野口を突き飛ばした。
だが野口は倒れない。
正面から若き岡田をにらみつけた。
『なんやこいつ…バケモンか…!?』
「お前に言われる筋合いはない!」
『うぐ〜〜〜〜〜!!』
若き岡田は眉間にしわをよせ、悔しそうに歯噛みした。

153 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:07:38 ID:dBDqzv830
ぺっ!
折れてしまった奥歯と一緒に、血の混じった唾を吐き捨てる。
(まともにぶつかったら、やはりオレの分が悪いか…。どうすればいい…?)

『…くっ!』
若き岡田は、罵りながら短刀を取り出した。
「……!?」
『しぶとく刃向かうお前が悪いんよ。すぐ殺したるわ』
(…………!)
刃物くらいで怯むわけにはいかない。
野口は腰を落として身構えた。
見紛うほどの疾さで岡田が突っ込んでくる。
『これで終わりよ!』
「――!」
短刀を握る岡田の右手を薙ぎ払う。
「…せいッ!!」
そして、勢いを殺さぬまま岡田を空中に放り投げた。
『な、なんやっ!?』
唐突に反転したセカイに反応できず、岡田はそのまま後頭部を強打した。

「はぁ、はぁ……」
一気に緊張の糸が途切れた野口は、無意識のうちにその場に膝をついた。
(大丈夫だ、オレは負けちゃいない…)
野口はそのまま、うつぶせになって倒れた。


(不覚…)
これまでたくさんの選手を始末してきたが、敗北はおろか苦戦すらしなかった。
この野口という男と、他の選手。何が違うのかは分からないが、認めざるを得ないだろう。


154 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:11:17 ID:dBDqzv830
ゆっくりと、若き岡田は起き上がった。
視線の先には、倒れたままの野口がいる。
『ぐふふ…さすがにもう限界か…。ま、そらそうやわな』
「ふふ、そう言うお前は…さすがにタフだな…」
野口は驚いた様子は見せずにそう言った。おかしなことに笑いが込み上げてきた。
『もう反撃しないんか?』
「さぁ、どうだろうな…」
野口は最後の力を振り絞り、上体だけなんとか起こした。
『今度こそ本当に終わりよ。どんな気分や?』
「どうかな。オレはもう動けないが、全くと言っていいほど死ぬ気がしない」
『お前の都合なんて聞いとらんわっ』
岡田は無防備な野口を、思い切り蹴り上げる。
『ふん、生意気なツラや。お前は死ぬんよ。そやのに何でそんなツラなんや!』
「言っただろう…。オレは死にやしないよ」

『ええい、喋るんやない。お前の言葉は耳障りや!』
「………!」
岡田は、握った短刀を野口めがけて振り下ろす。
その瞬間――

「ニャァ〜〜〜」

岡田と野口の中間を、小さな猫が横切った。
『な――っ!?』


「双方、そこまでだよ」

第三者のその言葉と同時に、大きな爆発が起こった。

155 :328 ◆U/eDuwct8o :05/03/06 17:14:28 ID:dBDqzv830
ども。


今回は>>107-111の続きです。


156 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/07 21:53:14 ID:Ej86abAG0
>>155
乙です。続きが気になりますなあ…

157 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/09 19:10:38 ID:Sp6bBDq40
ソフトバンクのイメージ
http://sports7.2ch.net/test/read.cgi/npb/1110345400/


158 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/11 04:56:13 ID:210YGiAP0


159 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/11 15:49:45 ID:8fRa3aFX0
しゅ

160 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/12 00:56:22 ID:7sI4AipeO


161 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/12 17:34:32 ID:2P3evZcw0


投下待ち捕手

162 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/12 23:24:17 ID:IDWT4zBs0
なにげに好きなキャラはリレーでは金本&藤本。

163 :542(1/4):05/03/13 23:03:31 ID:vE7FUOfW0
>>119

42.人間性の虐殺

ひとしきり、嘔吐した。
頭に鉛の弾でもぶち込まれたような感覚だった。身体中を悪寒が駆け巡り、
末端にまでそれが充満している。太陽は地べたに四つん這いになったまま
嘔吐を繰り返した。身体を震わせた瞬間に振動が脳髄に伝わり、またえずく。
「かは、っ……ぁ゙、が……」
殆ど食物の入っていない胃が痙攣し、僅かばかりのどろりとした物体と刺激臭を
放つ液体を逆流させた。胃酸が咽喉を焼き、その感触がまた吐き気を誘発する。
苦しくて苦しくて、まなじりに冷たいものが溜まる。悪循環だった。
「ゲホッ、げ、ぇ……っ……」
胸を掻きむしっても震えは止まらない。
瞬きひとつ、息のひと吸いがままならない。だらんと下がった頭に血が集まり、
眼の奥で光がチカチカ点滅するのと同時に視野が狭窄している事を認識する。
脳味噌をミキサーでぐちゃぐちゃにかき回されるような眩暈と不快感の中で、
ぼんやり残った網膜のスクリーンに映る自分の手が他人のもののように見えた。
指の長い、大きくて器用な右手。自慢の右手。
泥と砂に汚れた右手。
つい最近まで商売道具だった、大事な大事な右手。
「は、はは……」
爪の間には赤黒く変色した血がこびりついている。
太陽は力なく笑った。自嘲の笑みだった。這いつくばったまま手のひらに力を
加えると、長くて節のある伸びやかな指がぐぐっと土をえぐり、短く切られた爪が
地面に5本の線を描く。何度も何度も、無心にそれを繰り返した。指先が痺れて
じんじんと痛むまで、両手を支える地面の周りが掘り返された柔らかな土で
こんもりと盛り上がるまで―――
しかしそうやって苛めてみても、爪の先には未だ薄っすらとほの朱い色が、
薄っすらとほの緋い感触が、残滓のようにぬらぬらと纏わりついている。

164 :542(2/4):05/03/13 23:04:27 ID:vE7FUOfW0
そうだ、コレは血だ。
人間の血液だ。
俺が殺した。
―――さっき俺が殺してしまった、大介の血だ……

殺した時は、。
そんなに―――いや、『そんなに』と言うとかなり大きな語弊があるけれども、
とにかくそれほど大きなショックは感じなかった。
人を殺めた事それ自体に対する衝撃は小さかった。
その時点においては、自分が殺人者になったというのは単なる事実確認に
過ぎなかったのだ。自分は、他人を犠牲にしてでも生き残ろうとする、それが
出来る人間であるという事実確認。単純で些か乱暴だけれど、このトチ狂った
世界の中では大変に重要な意味を持つ事実だ。この際真実と事実の相違に
ついては置くとしよう。議論する意味がない。ここには殺す人間と殺される人間、
それだけしかいないからだ。究極的に突き詰めていくと、この島に放たれた
獰猛で哀れな猛獣たち―――これは自分たちの事に他ならない―――の
分類はその二つだけ。
喰うか喰われるか。
カテゴライズはそれだけだ。
太陽はそう自分に言い聞かせた。血に染まった、命の次くらいに大事にしていた
自分の右手を見つめながら、口の中で呪文のように繰り返した。
だって、アリアスは中村を殺していたじゃないか。
尋常じゃない目の色をして、死んだ中村をずるずる、ずるずる、まるで大きな
ずた袋のように引きずっていたじゃないか。
自分が殺さなくったって、誰かが殺す。いつか殺す。殺す。殺される。
なら、自分が誰かを殺しても仕方がないんじゃないか?

165 :542(3/4):05/03/13 23:07:18 ID:vE7FUOfW0
―――あまりにあっさりと人を殺してしまえて、太陽は拍子抜けしていた。
(なんだ、簡単じゃないか)
簡単だった。
適当に見つけた萱島の後を尾けて、気付かれたらちょっと喋って仕草で煽って、
向かって来たのを最終的に体格差で捻じ伏せ、殺した。
あまりに簡単すぎて、あまりにスムーズすぎて。
ネジの飛んだ頭。メーターの振り切れた脳。薄らいでゆく倫理観。
リアルさが致命的に欠落した感覚に支配されるまま、身体は動いた。
武器の処理も、荷物の収奪も。冷酷な捨て台詞までもが滑らかに口をついて、
太陽は少しだけ複雑な気分だった。
アリアスもこんな気持ちだったのだろうか。
殺人を終えて彼が安堵していたのか、動揺していたのか。それは解らないけれど。
情けない顔をして悲鳴を上げた俺の事を、どんな目で見ていたんだろう?
「簡単、だったな」
呟く。確認する。『作業』が本当に作業であった事を自分の頭に刷り込む。
暫く経てば頭が冷えて、周りの景色が目に入るようになった。殺人現場から
離れるにつれ、血臭漂う神経の昂ぶりもすっかり治まる。静かな森の中に身を
隠しているうちに、トリップしていた脳が現実に引き戻される。冷静になる。
―――そしてそこで突然、酷い眩暈に襲われた。
(殺したんだ)
事実だった。自分が選び、自分が実行した事実。だのに、何だか理不尽な
論理展開をしているような気がする。腑に落ちない。
騙し討ちをされたような気分。
「殺した」
呟くと、その言葉が自分の両肩に重く圧し掛かってくるような錯覚を覚える。
「俺が、殺した」
もう一度呟いた。その途端、ベルトに挿したアイスピックと手にした包丁が
ずんと質量を増したような、そんな感覚が身体を包んだ。
包丁には自分の血が、アイスピックには彼の血が。
殺した。
認識した次の瞬間、太陽は嘔吐していた。

166 :542(4/4):05/03/13 23:09:07 ID:vE7FUOfW0
―――ひとしきり嘔吐した。
内臓が口から飛び出るんじゃないかと思うくらいの苦しさにのた打ち回った後、
汚物でべとついた唇を手の甲で拭った。ぬるぬるとした感触がまた気味悪くて
汚れた手を地面に擦り付ける。乾いた泥がくっつき、汚れを浚い、さらさらとした
埃っぽい手触りを与えてくれる。懐かしい土の温もり。
口をつけないようにしてペットボトルの水を唇に注いだ。何度も口をすすぎ、
何度も吐き出した。清涼感が心地よくて、酷く痛かった。
……痛かったのだ。
痛くて痛くて堪らなかった。
自分は仲間を殺してしまった。もうこの先、それ以外の道は進めないのだ。
喰われる側に回りたくなければ喰らうしかない。他人の命を喰らい続けて、
生き延びるしかない。(でも、そんな俺に生きる価値があるのか?)
自分は死ぬのだ。(嫌だ、死にたくない)
今までの自分は死に、人の血を啜って生きる『自分』だけが残る。(やめろ)
そう、ただそれだけの話。(―――本当に、それだけ?)


圧倒的な恐怖と、ズタズタに凌辱し尽くされた自分自身と。
喪ったものの大きさに、太陽はぐったりと四肢を投げ出したまま、少しだけ泣いた。

【残り38人】

167 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 00:00:44 ID:GAP23IQM0
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
職人さん乙です!

168 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 01:40:21 ID:Q5q02Hhm0
包丁よりアイスピックの方が強かったのか。。。太陽、泣くなぁ。

169 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 12:29:58 ID:ljQx1LOT0
太陽(´Д⊂ヽ

170 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/14 20:50:19 ID:JElML4im0
1/4が表示されてなくて焦った…NGワード入ってたらしい
ともあれ、職人さん乙

171 :515(1/4):05/03/15 18:14:30 ID:urzXhqRX0
>>163

43.使者

大鍋から茶碗で温をすくい、頭に被る。
水の流れる音、水の跳ねる音―――ふと、静けさが気になった。
音が気になることはあっても音のないのが気になることはあまりない。
耳の奥から糸でも出ていて、それをピンと引っ張られているような感触
がある。鼓膜が緊張している。
頭を振ると水滴が飛び散り、畳に着地してぱたぱたと音を立てた。辺り
は水浸しで、その水を吸った部分だけがやけに黒ずんでいる。それが
畳が古いせいか、水に流されたもののせいかは知らない。
今岡誠は汚れのなくなった手の平を確かめ、それを耳に当てた。そう
すると遮られるはずの音が今はないから、当てても当てなくても変わり
がない。ただ少し、冷えたものがぬくまるような、張り詰めたものが緩む
ような感覚はした。一体自分の何がそんな変化を起こしたのかわから
ないが。
鏡を見るのは気が向かないので、手で濡れ髪に触れる。頭も顔もすっ
かり綺麗になったようだ。冷たい水を被るのが嫌だという理由だけで湯
を沸かしたのだが、それが正解だったのだろう。
しかしさすがの温水も服の汚れまではどうしようもない。今岡は脱いだ
ユニフォームとアンダーシャツをそのままに置いて隣室へ向かった。
窓。日に焼けたくすんだ色合いのカーテン。ところどころが破れている
押入れの襖。安っぽい白のタンス。六畳ほどの和室は薄暗く、全体的
に煤けて見える。
タンスの前にしゃがむと最上段の引出しがちょうど目の高さにあった。
そこには見栄えも何も考慮しない無邪気さでたくさんのシールが貼ら
れており、ドラえもんやアンパンマン、ピカチュウ、しまじろうなどが愛想
のいい笑顔をこちらに向けていた。
―――ああ。
息子は今頃どうしているだろう。

172 :515(2/4):05/03/15 18:14:52 ID:urzXhqRX0
期待せず開けた引出しには、予想に反して大量の衣服が詰め込まれ
ていた。中から黒のニットを選び出し袖を通す。肩の幅と袖の長さが
わずかに足りない上、樟脳の強い匂いが鼻腔を占領し胸を圧迫した。
居間に戻る。濡れていない所に座る。赤いユニフォームと黒いアンダー
シャツを畳む。卓袱台の下に避難させていたデイパックへしまう。もう
一つのデイパックも引き寄せる。引き摺られたデイパックが畳に赤い
尾をひく。顔を上げる。野口寿浩がいる。
『死ぬってどういうことなんだろう』
もう知っているくせにまた同じことを聞いてくる。何度も聞いてくる。
はじめは何と答えたのだったか―――今岡は考える。生きていないと
いうことだ、と答えたか。思い付きのくだらない言葉遊びだ。愚問愚答
とはこのことだろう。そう、愚問だ。
死に説明は不要である。そもそもが説明できるものでない。
死の当事者にとっての死とは無でしかないからだ。脳の機能が停止
するのだから何も見えないし何も聞こえず、何も感じない。何も思わ
ない。何も考えない。それは無だ。無の概念さえもない、全くの無だ。
だから、死について益体もない考えを巡らせるのはいつだって生きて
いる者だけだ。
だから、
『死ぬってどういうことなんだろう』
―――これは俺の声か?
死の経験者は存在しない。今目の前にあるのは物を考え言葉を繰る
人ではなく、人の形をしたただの肉だ。今この瞬間も少しずつ腐敗して
いる肉だ。何も教えてはくれない。
あの高揚感はどこへ消えたのだろう―――。
唐突にそう思った。
体中を駆け巡り熱を上げ、目に映る世界の全てを輝かせたあの興奮は
一体どこへ消えてしまったのか、と。
この胸のどこかを削り取り、どこへ持ち去ったのか―――。

173 :515(3/4):05/03/15 18:18:35 ID:urzXhqRX0
欲求を満たす、その代償は大きい。それは昨夜も感じたことだった。
後悔があるのではない。ただひどく虚しくなる。空虚の密度の濃さに
辟易する。
衝動が矢のように胸を貫き、風穴を開けて去る。その穴を埋める術を
今岡は持たない。襲い掛かる衝動を防ぐ盾もない。
ただ流されているだけかと思う。それでいいのだ、そういうものだとも
思う。
しかし考えずにはいられない。今目の前に横たわる死のことを。
そうして思いを巡らせると胸の風穴が広がるのだ。
隙間がある。そこへ何かが侵入してくる。さらに大きく抉じ開けられた
そこにまた何かが入り込み、また穴を広げる。その繰り返しが、いつか
この心を消すような気がした。大きくなり過ぎた穴が主体になる。その
穴こそが新たな心になる。
これは―――何だろう。
自分が自分でなくなる。(『自分』とはこの肉体か、この意識か。肉体
が物理的に何者かに変容することはあり得ない。なら意識か? いや、
意識と肉体は不可分だ。ならばこの肉体がある限りは、『自分が自分
でなくなる』などというのは愚かに過ぎる戯言だ)
自分が何かに乗っ取られる。(馬鹿を言うな)
自分が自分でなくなる。(違う。違う)
「それでも生きてるって言うんかな」
生とは何だ。死を抜きにして生を考えられない。生と死は不可分だ。
では死とは何だ。生を抜きに死を考えられない。不可分。
死を『終わり』と考えた時、生は死へ向かう過程としかならないと思う。
ならば生は死のためにあると言えないか。
ならば人は死ぬために生まれるのか。死ぬために生きるのか?
―――それは……そんなのは
嫌だ。
「野口さん」
応えぬ死者に語りかけるのは馬鹿馬鹿しい。
「……野口さんは」
―――ずるい。

174 :515(4/4):05/03/15 18:18:56 ID:urzXhqRX0
死は在る。死は無、無は無い―――存在しないのに、今目の前に在る。
生者にとって死は存在するものなのだ。今ここに、死と生が在る。
何だ、これは。何なんだ。この苦しみは、何だ。

昔は死を『ケガレ』として忌み嫌ったそうだ。今ならその訳を理解できる。
死者は死の存在を伝えてくる。ただそこに横たわり、物言わず、それでも
伝えてくる。
そうした時、人は死を考えずにいられない。
死がいつでもそばにあることを知らずにいられない。
しかし人は知りたくないのだ。知っているのに、生を受けたその瞬間には
既に知っているのに、知らないフリをしていたいのだ。
そうしなければ―――

誰か自分の話を聞いてくれないだろうか。馬鹿だと笑ってくれないか。
会いたい。誰かに会いたい。誰でも良くはない。なら誰に?
家族に。―――会えない
友人に。―――会えない
仲間に。―――またあれが来たらどうする?
生きている者に会いたい。生を知る者に。言葉を持つ者に。
今岡は一人の男のことを思った。彼とは今までたくさんの話をしてきた。
先輩、友人、仲間。家族のようだとも思ったことがある。彼との関係を何と
呼ぶのが適切かはわからない。ただ、野球の話も、くだらない笑い話も
誰にも話したことのない話も、たくさん話し、たくさん聞いた。
彼なら聞いてくれるはずだ。笑い飛ばしてくれるはずだ。
そしてその場で素早く反論を捻り出し、嘘と真実を絡めてもっともらしく、
面白おかしく話して聞かせてくれる。
それに自分は騙される。納得する。安堵する。そう、それがいい。
会いたい。話がしたい。この、心の話を。この心が消えてなくなる前に。
―――金本さん。
会わなければ。そうしなければ―――

【残り38人】

175 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/15 20:13:51 ID:AQ5AieNe0
新作乙です。

・・・桧山のことかと思った。

176 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/15 21:14:24 ID:BY2zRcwX0
職人さん乙です。

俺も桧山かと思った。そいや金本とは家族ぐるみで付き合いがあるんだっけ。
身勝手ながら続きに禿しく期待…

177 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/15 22:39:51 ID:CcQr+Z3T0
桧山の事だとオモタ人3人目 ノ
多分「先輩」の単語のせいだな

178 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 01:58:07 ID:W/s4BEhs0
もうひとり桧山だと思った奴 ノシ
鉢と仲良いのは知ってるが、
実際そんなに喋ってるのを見た事ないせいか?
桧山はベンチで喋ってるのよく見るからなー

ともあれ職人さん乙です

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